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稀代の天才絵師の名品が眼前に広がる 企画展『大英博物館 北斎 ―国内の肉筆画の名品とともに―』

編集部注目の歴史イベント


サントリー美術館は2022年4月16日(土)~6月12日(日)の期間、『大英博物館 北斎 ―国内の肉筆画の名品とともに―』を開催する。江戸時代後期を代表する浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849)は、世界で最も著名な日本の芸術家の一人として国内外で高い人気を誇っている。なかでも大英博物館には、複数のコレクターから入手した北斎の優品が多数収蔵されており、そのコレクションの質は世界でもトップクラスである。本展では、この大英博物館が所蔵する北斎作品を中心に、国内の肉筆画の名品とともに、北斎の画業の変遷を追い、約70年におよぶ北斎の作画活動のなかでもとくに還暦を迎えた60歳から、90歳で亡くなるまでの30年間に焦点を当て紹介している。


 

サントリー美術館 『大英博物館 北斎 ―国内の肉筆画の名品とともに―』

 

《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 葛飾北斎 横大判錦絵 江戸時代 天保元-4年(1830-33)頃 大英博物館 2008,3008.1.JA © The Trustees of the British Museum

《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 葛飾北斎 横大判錦絵 江戸時代 天保元-4年(1830-33)頃 大英博物館 2008,3008.1.JA © The Trustees of the British Museum

1.貴重な初期作と、晩年の代表作

 

 北斎の揃物の名品は、その多くが70歳を過ぎてから制作された。たとえば、風景版画の名手としてのイメージを決定づけた《冨嶽三十六景》は、数え71歳から74歳頃の作品と考えられている。その後、立て続けに刊行された《諸國瀧廻り》や《諸國名橋奇覧》のシリーズは、《冨嶽三十六景》と同じ西村屋与八から出版されており、北斎の独特な風景描写が広く人気を博していた様子がうかがえる。一方で、「春朗」という画号で活動していた初期の作品《市川鰕蔵の山賤実は文覚上人》からは、人物の動きを捉える巧みなバランス感覚が見て取れ、画業の最初期からすでに才能を開花させていたことが分かる。

 

 本展では、大英博物館の所蔵する揃物の優品や、現存数の少ない貴重な初期作を紹介している。

 

 

2.肉筆画の名品

 

 北斎が直接筆を執った肉筆画には、彼の卓越した画力と大胆な発想力が遺憾なく発揮されている。肉筆画は40代から50代半ばと、75歳頃から没年までの2期に多く描かれており、とくに前者では美人画の優品、後者では幅広い画題に挑戦をした意欲作が次々と生み出された。代表作《流水に鴨図》(大英博物館)は88歳の作品であるが、水上と水中の様子を対比的に描き分ける巧みなテクニックには、一切筆の衰えが感じられない。年齢が記された肉筆画のなかでは88歳が最も多く、最晩年になっても常に高みを目指し続けていたことが分かる。また、暗闇に浮かび上がる鬼と弘法大師の姿が強烈なインパクトを残す《弘法大師修法図》(西新井大師總持寺)は、晩年期の作品では最大級で、80代後半になってもなお気力と体力に満ち溢れていた北斎の姿が浮かび上がってくる。

 

 本展では、大英博物館および国内所蔵の肉筆画の名品を通して、天才絵師・北斎の真骨頂を見ることができる。

 

 

3.コレクターと大英博物館

 

 大英博物館が所蔵する北斎作品は、様々なコレクターからの譲渡によって、質・量ともに充実していった。華やかな錦絵や肉筆画はもちろんのこと、版本、摺物、版下絵など、北斎の多岐にわたる作画活動を網羅しており、それぞれのコレクターや研究者の優れた審美眼が、世界有数の北斎コレクションを築き上げた。なかでも、外科医ウィリアム・アンダーソン(William Anderson、1842~1900)と小説家アーサー・モリソン(Arthur Morrison、1863~1945)の果たした役割は大きく、彼らの蒐集品は大英博物館における日本絵画コレクション全体の礎となった。アンダーソンは著作『日本の絵画芸術(“The Pictorial Arts of Japan”)』のなかで、自身が所蔵していた《為朝図》を取り上げ、北斎の芸術的才能や作品に表れる精神性・知性を高く評価している。そして、《流水に鴨図》や《若衆図》などの重要作品を所蔵していたモリソンもまた、著作『日本の画家(“The Painters of Japan”)』で北斎について言及し、その幅広い画域を称賛している。加えて、研究面で北斎コレクションを支えたのが、詩人であり大英博物館のキュレーターでもあったローレンス・ビニョン(Laurence Binyon、1869~1943)である。ビニョンは《百人一首姥がゑとき》や《詩哥冩真鏡》といった代表的な版画の揃物を購入し、博物館のコレクションをより成長させただけでなく、アンダーソン・コレクションを整理し、数多くの日本美術関連の著作を執筆するなど、イギリスにおける日本美術研究に多大なる功績を残した。

 

 本展では、6人のコレクターおよび研究者に着目し、旧蔵品や著作、関連資料などを通して、イギリスにおける北斎愛好にも焦点を当てている。

 

 

【開催概要】

<展覧会名>『大英博物館 北斎 ―国内の肉筆画の名品とともに―
<開催期間> 2022年4月16日(土)~6月12日(日)
<開館時間> 10:00〜18:00(金・土は10:00~20:00) 
      ※いずれも入館は閉館の30分前まで
      ※開館時間は変更の場合があります

<休館日> 火曜日 ※6月7日は開館 
<会場> サントリー美術館
    〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階

 

<観覧料>

一般      当日 ¥1,700 前売 ¥1,500
大学・高校生  当日 ¥1,200 前売 ¥1,000

※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
[チケット販売場所]
サントリー美術館受付(火曜日、展示替え期間中を除く)
サントリー美術館公式オンラインチケット
ローソンチケット:Lコード 35880(前売・当日券共通)
セブンチケット:セブンコード092-434(前売・当日券共通)
※前売期間は1月26日(水)から4月15日(金)まで
※サントリー美術館受付での前売券販売は3月27日(日)までの開館日に限る

 

<主 催> サントリー美術館、大英博物館、朝日新聞社

<協 賛> 三井不動産、三井住友海上火災保険、ダイキン工業、サントリーホールディングス

<協 力> 日本航空

展覧会公式サイト
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_2/

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