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野心に生きた「怪物」一橋治済

蔦重をめぐる人物とキーワード㉗


7月27日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第28回「佐野世直大明神」では、田沼意知(たぬまおきとも/宮沢氷魚)の死が描かれた。不審な男の暗躍に気づいた蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)は、田沼意次(おきつぐ/渡辺謙)に意知の仇討(あだう)ちを進言するのだった。


■蔦重の言葉で田沼意次が仇討ちを決意する

東京都千代田区に残る一橋徳川家屋敷跡。1740(元文5)年に拝領され、幕末まで存続した。2017(平成29)年に初めて発掘調査が行なわれた。その結果、庭園や堀の遺構などが確認されている。

 江戸城内で田沼意知が佐野政言(さのまさこと/矢本悠馬)に斬りつけられる事件が起きた。意知は、父・意次に身請けした遊女・誰袖(たがそで/福原遥)のことと、志半ばだった蝦夷(えぞ)地開拓の夢を託して死去。愛息を失った意次は深い悲しみに暮れる。

 

 犯人の政言は事件翌日に切腹したが、江戸市中では彼を英雄視する声が広まり、意知の葬列には民衆から「天罰だ」と石が投げつけられる始末だった。恋人の棺を身を挺してかばった誰袖は、蔦重に涙ながらに仇討ちを懇願する。

 

 そんなある日、蔦重は、政言を「世直し大明神」と祀り上げる幟(のぼり)を立てる男が、葬列で最初に石を投げた大工と同一人物であることに気づき、一連の事件の裏で糸を引く黒幕の存在を確信する。

 

 江戸城に向かい、その疑念を意次にぶつけるが、意次は「息子が斬られたのは俺のせいだ」と自責の念に囚われ、取り合わない。一方、誰袖は屋敷で佐野一族への呪詛(じゅそ)を繰り返すなど、正気を失いかけていた。

 

 そんななか、蔦重の訴えが意次の心を動かした。意次は悲しみを乗り越え、「生きて息子の志を成し遂げる。それが俺の仇の討ち方だ」と決意を固めるのだった。

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小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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