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戦国時代の軍師って一体なにしたの?─仕事と求められる能力─

戦国レジェンド


戦国時代に活躍した「軍師」と呼ばれる男たち。イメージはかっこいいし、強そうな印象を抱くが、一体なにをした人たちなのか、具体的には知られていない。ここでは、軍師の仕事とその能力について紹介する。


 

■合戦の在り方とともに変遷した軍師の役割

 

吉備真備
日本の軍師第一号だといわれる人物。唐で学び、朝廷の要人として活躍。政治力も持ち合わせた天才であった。

 

 軍師(ぐんし)というのは、もとはといえば、戦国大名の側近くに仕えて合戦を取り仕切った家臣のことをいう。戦国時代の軍師で最も重要な任務は、合戦に際し、出陣の日取りや進軍の方角を占うことであった。

 

 出陣するにしても、いつ出陣してもよいというわけではない。暦こよみには吉日(きちじつ)と凶日(きょうじつ)があり、吉日に出陣すれば勝利するが、凶日に出陣すれば敗北するという意識があった。しかも、最初から吉日と凶日が決まっているのではなく、大将の生まれた月によって、出陣に最適な日取りや方角は変わってしまうのである。いつ出陣するかを決めるのは一大事であり、もし、吉日に出陣が間に合わないときには、調伏(ちょうぶく)の矢を射るという儀式を行い、形としては出陣することにしなければならない。そのため、易(えき)などの占術(せんじゅつ)や陰陽道(おんみょうどう)に基づく占星術(せんせいじゅつ)に通じた軍師が必要とされていたのである。

 

 しかし、戦国時代の後半ともなると、物量で圧倒する戦い方が主流になっていく。そのため、出陣の日取りや進軍の方角を占うのではなく、戦略や戦術をめぐらし、ときには外交にも関与する家臣が求められた。合戦を取り仕切るという点では同じであるが、求められる役割はかなり違う。戦略や戦術にも通じていなければならなかった。ある意味では主君の補佐役であり、こうした家臣のことを参謀(さんぼう)と呼ぶこともある。ここで紹介しているのは、いずれも参謀の役割をもった軍師である。

 

■軍師の「能力」

 

<武勇>

戦乱の時代であることから、まずは単騎で活躍できる力量が求められた。実際の戦闘で活躍ができなければ、その後の出世も生存も難しくなってしまう。

 

<官僚的才能>

戦時に備えた武器や食料の準備から安定した補給、さらに検地や商業振興といった内政面まで、事務方の能力まで備えている必要があった。

 

<戦略・戦術>

大局的な視点からの戦略提案能力は、軍師にもっとも必要な能力のひとつ。攻め方に加えて、進軍と退却の機を見極め、大名に伝えることが求められた。

 

<学識・技能>

主に合戦の前後に行われる儀式や呪術などに通じ、博識であることも軍師の条件として挙げられる。時には忍者など、特殊な勢力との関係性も役立った。

 

<主君の信頼>

戦略の決定に際して、大名や重臣からの同意は必要不可欠。日頃からコミュニケーションを図り信頼を得て、関係性を築いておくことが名軍師の条件だ。

 

<交渉力>

敵方についた国人や武将の寝返り工作、他の勢力との同盟交渉など、自国を有利にする外交・交渉能力も必要だ。特に、僧侶などはこの能力が高かった。

 

監修・文 小和田泰経

歴史人2023年3月号「戦国レジェンド」より

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