自民党圧勝で「タカ派外交」が本格化? 日中関係に亀裂で「台湾有事」が現実味か
2026年2月8日に投開票が行われた第51回衆議院議員総選挙は、高市早苗首相率いる自由民主党の圧勝に終わった。2025年10月の就任以来、日本維新の会との連立による少数与党という不安定な足場を強いられてきた高市政権であったが、今回の勝利によって盤石な政治基盤を獲得した。この結果は、単なる政権の安定にとどまらず、日本の外交・安全保障政策の歴史的な転換点となる可能性を秘めている。
高市首相はかねてより、国家の主権と名誉を守り抜く姿勢を鮮明にしてきた政治家である。選挙という国民の信託を後ろ盾に、首相は自らの政治信条である「タカ派的」な外交を本格化させるだろう。とりわけ対中政策においては、従来の配慮や均衡を重視した姿勢から、妥協を許さない毅然とした姿勢へと軸足を移すことは疑いようがない。その中核に据えられるのが、台湾問題である。
高市首相は一貫して「台湾有事は日本有事」という認識を掲げてきた。選挙前、国会答弁で台湾有事を「存立危機事態」に該当しうると言及した際には、中国側から激しい反発と一部の経済的報復を招いた。しかし、選挙での勝利を経て、首相はこの路線をさらに加速させる構えだ。具体的には、日米台の連携を深化させ、これまで「非公式」の枠組みに留まっていた台湾との防衛協力を、水面下で実効的なものへと強化していく方針である。自衛隊と台湾軍の意思疎通や、南西諸島を起点とした共同の抑止力向上は、もはや避けては通れない優先課題となっている。
しかし、日本側が抑止力の強化として進めるこれらの措置は、中国側から見れば明白な内政干渉であり挑発行為と映る。中国は既に高市政権の動向を厳しく警戒しており、日本の防衛協力が深化すれば、それに対抗する形での軍事的威嚇を激化させることは自明である。台湾海峡や尖閣諸島周辺における艦艇・航空機の活動はより常態化し、挑発のレベルも一段階引き上げられるだろう。
日中間の外交ルートが機能不全に陥り、互いの不信感が深まる中で、台湾有事の発生可能性は皮躍的に高まっている。かつては机上のシミュレーションであった有事が、政治指導者の強い信念と、それに対抗する覇権国家の衝突という構図の中で、現実的なリアリティを帯び始めている。高市政権が手にした安定した政治基盤が、皮肉にも東アジアの緊張を沸点へと押し上げる着火剤となるのか。日本は今、かつてないほど険しく、引き返せない外交的緊張に足を踏み入れようとしている。

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