「抗日戦争勝利80年」とは? 中国が計画する大規模な“戦勝80周年”記念行事の目的
2025年は、中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争の勝利から80周年を迎える年である。この節目は、1937年から1945年まで続いた日中戦争(中国では「抗日戦争」と呼ばれる)の終結を記念するもので、中国政府はこれを「戦勝80周年」と位置づけ、盛大な記念行事や軍事パレードを計画している。具体的には、9月3日に北京の天安門広場で大規模な軍事パレードが行われる予定で、習近平国家主席の演説や最新の軍事技術の展示が予定されている。このイベントは、中国共産党の統治の正統性を強調し、国内外に「戦勝国」としての立場を示すことを目的としている。しかし、この時期には反日感情が高まる可能性があり、在中日本人に対する注意喚起が日本政府から発せられている。
抗日戦争は、盧溝橋事件(1937年7月7日)をきっかけに始まり、日本と中華民国(当時)の間で8年間続いた全面戦争である。中国ではこの戦争を「抗日戦争」と呼び、特に南京事件(南京大虐殺)などの歴史的出来事が強調される。中国共産党は、歴史的に中華民国(国民党)が主に戦ったにもかかわらず、自身が抗日戦争の主要な勝利者であると主張し、現在の政権の正統性を裏付けるプロパガンダとしてこの歴史を利用している。2025年の記念行事では、映画の上映や展示会、記念式典を通じてこの歴史が強調され、国民の愛国心を鼓舞する一方で、反日感情を煽る可能性が指摘されている。特に、経済成長の鈍化や国内の不満が高まる中、こうしたイベントは政府への批判をそらすための手段とも見られている。
在中国の日本人がこの時期に気をつけるべき点は多岐にわたる。まず、日本政府の外務省は、記念行事に伴う反日感情の高まりに警戒するよう呼びかけている。具体的には、不審者や集団による接近に注意し、子供連れでの外出時には特に警戒が必要である。過去の同様の記念行事では、反日デモや日本人への嫌がらせが散発的に発生した例があり、特に大都市や歴史的関連地の周辺では緊張が高まる可能性がある。たとえば、北京や上海、南京などの都市では、記念イベントや抗議活動が集中する傾向があるため、これらの地域では不必要な外出を控え、集会やデモに近づかないことが推奨される。
さらに、言動にも細心の注意が必要である。歴史問題に関する議論や、戦争に関連する場所(例:南京大虐殺紀念館)での不用意な発言は、誤解を招き、トラブルに発展する可能性がある。SNSや公共の場での発言も慎重に行い、感情的な反応を引き起こす話題は避けるべきである。また、万が一トラブルに巻き込まれた場合、速やかに現地の日本大使館や領事館に連絡することが重要である。外務省のウェブサイトでは、緊急連絡先や安全情報が随時更新されており、これを確認しておくことが推奨される。
最後に、在中の日本人コミュニティや企業は、事前に現地の情報収集を強化し、状況に応じた対応策を準備しておくべきである。現地のニュースや大使館の発表をこまめにチェックし、必要に応じて旅行計画や外出スケジュールを調整することが求められる。80周年という節目は、中国にとって歴史的意義が大きく、ナショナリズムが高揚しやすい時期である。在中日本人は、冷静な判断と慎重な行動を心がけ、安全を最優先に考える必要がある。

天安門/写真AC