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朝鮮の古代国家・百済の王子が祖先とされる名家として周防山口に繫栄と文化隆興をもたらし“西の京”を創出した「大内家」の歴史とは?【戦国武将のルーツをたどる】

戦国武将のルーツを辿る【第24回】


日本での「武士の起こり」は、遠く平安時代の「源氏」と「平家」に始まるという。「源平」がこれに当たるが、戦国時代の武将たちもこぞって自らの出自を「源平」に求めた形跡はある。だが、そのほとんどが明確なルーツはないままに「源平」を名乗ろうとした。由緒のあるか確たる氏素性を持った戦国大名は数えるほどしかいない。そうした戦国武将・大名家も、自分の家のルーツを主張した。絵空事も多いが、そうした主張に耳を貸してみたい。今回は鎌倉時代より勢力を表し、周防を“西の京”と呼ばれるほどの繁栄をもたらした西国一の大名「大内家」の歴史にせまる。


 

大内氏最後の当主・大内義隆/国立国会図書館蔵

 

 大内氏の拠点である周防山口(現、山口市)は、殺伐とした戦国時代の前後から「小京都」とも呼ぶべき文化が興隆した。この興隆を築いた大内家は、系図によれば、百済(くだら/古代朝鮮の南部の王国)25代・聖明王の第3王子・琳聖太子(りんしょうたいし)が周防に漂着し、その子孫が大内村に居住したことから「大内氏」を称したという。異説もあり、大内氏は実際には周防権介を世襲した在庁官人であったともいう。大内氏は、鎌倉時代には周防の国衙で要職を務めるとともに御家人として六波羅評定衆のひとりにもなっている。

 

 系図は、この琳聖太子後の何代かの後に、大内弘幸、そして弘世(ひろよ)と続く。この弘世が、室町時代の初めに周防を統一し、さらに長門に進出して防長2国を押さえて、室町2代将軍・足利義詮(よしあきら)から周防・長門・石見3国の守護に任じられたのである。周防山口に本拠を構えた弘世は、ここに京都から祇園社や北野社、愛宕社などの神社を勧請して「小京都」として発展させていった。これが大内氏の伝統になり、京都の文化を取り入れながら大きく成長していくのだった。

 

 弘世の子・大内義弘(よしひろ)は、九州探題の今川了俊の九州下向に従ったり、明徳の乱(11カ国の守護であリ一大勢力をもった山名一族を足利3代将軍・義満が鎮めた乱)では、畠山・細川氏らとともに義満の命令に従って滅亡させた。こうした武功によって、義弘とその一族は、周防・長門・石見ばかりか、豊前・和泉・紀伊など3カ国を加えて6カ国の守護を兼ねる大きな勢力になっていった。

 

 ところが、応永6年(1399)、勢いに乗った義弘は、足利氏にとっては敵ともいえる鎌倉公方・足利満兼らと手を握り、反乱を起こしてしまった。応永の乱という。戦いの末に、4代将軍・義持によって義弘は敗死し、大内一族も幕府から追放という処分を受けることになってしまった。

 

 一時衰退を余儀なくされた大内一族を再興したのは、義弘の甥・教弘(のりひろ)であった。新興なった教弘の大内氏は、管領・細川氏と対抗できるまでの力を付けるほどになる。その子・政弘は、応仁・文明の乱では西軍に属して戦い、西軍の総帥・山名宗全が没した後には西軍を率いて戦うほどであった。そして、政弘の子・義興は、10代将軍・義稙の時代には管領代にまで昇進した。

 

 さらにその嫡男・義興の時代に大内氏は最盛期を迎える。義興は、周防・長門・豊前・石見・筑前・備後・安芸7カ国の守護を兼ねる迄に伸張した。その上に、将軍家に代わって大内義弘が「日本国王」を名乗って明や朝鮮との貿易にまで乗り出すようになった。近隣諸国は、大内氏を将軍・足利家と同等、あるいはそれを上回る存在と見なしていた可能性もある。こうしたことから、貿易を有利に進めるために「百済・琳聖太子を先祖として名乗った可能性もある。義興は、貿易をもっと活発化するために貿易の中心地・博多を押さえようと、北九州進出も図った。そして豊かな財政を背景に、伝統と歴史のある「小京都」をさらに発展させて繁栄した。

 

 しかし、義興の嫡男・大内義隆(よしたか)の時代に入ると、守護代・陶晴賢(すえはるかた)の謀反によって義隆は自害。その後は、実権を握った陶も毛利元就に滅ぼされ、大内氏は滅亡する。

 

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江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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