2026年の日中関係を徹底解説 安全保障、経済、外交における対立が及ぼす影響とは?
高市総理による「台湾有事は存立危機事態」との発言は、2025年の日中関係に大きな亀裂を生じさせた。その影響は2026年においても尾を引くことが避けられず、関係の後退は長期化する見通しである。この発言は、日本の安全保障政策における台湾の位置付けを明確にし、中国が最も敏感に反応する「一つの中国」原則に関わる問題に深く踏み込んだため、日中間の戦略的対立を一層先鋭化させた。中国側は、内政干渉であり、日本の対中基本姿勢を逸脱するものとして、激しく反発した。両国間の高レベル対話は停滞し、経済や文化交流にも冷ややかな空気が流れ込んでいるのが現状である。
■台湾問題を巡る緊張の常態化
2026年、日中関係は「戦略的互恵関係」という建前の裏側で、安全保障上の緊張が常態化する局面を迎える。特に、中国の台湾周辺での軍事活動の活発化や、日本の防衛費増額と南西諸島への自衛隊配備強化は、互いの不信感を増幅させる負の連鎖を生み出している。台湾有事への「備え」が両国の国内政治において重要なテーマとなり続ける限り、外交チャンネルでの関係改善は極めて困難であると言える。日本政府が「存立危機事態」の認識を撤回することは考えられず、中国政府も強硬な姿勢を崩さないため、この問題は今後も両国関係の最大のアキレス腱であり続けるであろう。
■経済分野での「デリスキング」加速
政治的な冷え込みは、経済分野にも深刻な影響を及ぼし、日中関係の後退の長期化を決定づける。多くの日本企業は、中国への過度な依存をリスクと見なし、サプライチェーンの「デリスキング(リスク低減)」を加速させている。これは、単なる生産拠点の移転に留まらず、研究開発や市場戦略の見直しにも及ぶ。中国経済自体が不動産不況や内需の低迷、米国との貿易摩擦などの課題を抱える中で、日本企業にとって中国市場の魅力が相対的に低下していることも、この動きを後押ししている。
2026年には、経済安全保障上の懸念から、重要技術や機密情報の管理が一層厳格化され、日中間のハイテク分野での連携は大幅に制限される見通しである。中国側も、対抗措置として独自の規制や標準化を進める可能性があり、経済の分断は一層深まるであろう。かつてのような「政冷経熱」の関係はもはや期待できず、「政冷経冷」の様相を呈する可能性が高い。
■国際秩序と日本の役割
国際社会が米中対立の構図の中で動く中、日本は「自由で開かれたインド太平洋」の旗手として、米国やその他の友好国との連携を強化する方針を堅持するであろう。これにより、日中間の外交上の溝は埋まりにくくなる。中国は、日本の外交姿勢を「米国への追従」と見なし、批判を強めるであろう。
2026年の日中関係は、困難な航海が続くことが不可避である。偶発的な衝突を避けるための危機管理の枠組み維持は不可欠であるが、根本的な関係改善の糸口を見出すのは極めて難しい状況である。日本と中国は、それぞれの国益と安全保障を最優先する中で、互いの譲れない一線を意識した、緊張感のある関係を続けることになるであろう。両国が関係後退の長期化という新たな常態にどう向き合うのか、その舵取りが問われる一年となる。

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