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赤穂浪士の吉良邸討ち入りは、浅野内匠頭の怨霊鎮魂が目的だった?

鬼滅の戦史106

姿を消した寺坂吉右衛門の魂は?

元は麻布にあったが、正保年間に移された泉岳寺の山門。浅野内匠頭以下四十七義士の墓がある。『大東京名所繪はがき集』1932年撮影 主婦之友社/編 都立中央図書館蔵

 最後に、興味深いお話をもう一つ。それが、討ち入り人数に関する謎である。

 

 実は、吉良邸に討ち入った人数は47人であったが、泉岳寺へと引き上げたのは46人しかいなかった。つまり、途中で一人が姿を消していたのだ。それが、足軽として参加していた寺坂吉右衛門(てらさかきちえもん)であったと言われている。死を恐れて逃亡したとか、密命を帯びて姿を消したなど様々な説が飛び交っているが、真偽のほどは不明。

 

 士分(しぶん)ではなかったことで他の元藩士たちから温情を施され、わざと逃されたのだとする説に同調したい。士分だけが切腹という名誉の死に望むことができるとの自負心によるものであったことも考えられそうだ。

 

 この御仁、一説によれば、江戸麻布の曹渓寺で寺男を勤めた後、延亨4年(1747)に病死(享年83)したとか。ともあれ、士分云々は別として、少なくとも彼自身の志は他の浪士たちと何ら変わることはなかったであろう。死した後の魂が、他の46名とともにいると信じたいのである。

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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