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武田信虎が直面した北条・今川との戦いと家臣の離反

武田三代栄衰記②

北条、今川家との一進一退の戦い

武田信虎像
甲府駅東口に立つ信虎像。甲府の開府500年を記念し、2018年12月に除幕式が行われた。大泉寺所蔵の肖像画を元にしている。甲府の礎を築いた功績は、信玄以上に信虎にあるという再評価の表れでもあるだろう。躑躅ヶ崎館(現・武田神社)は、この像の背後にある。

 甲斐統一を果たした武田信虎は、大永4年(1524)から、国外の抗争に介入していく。信虎は今川氏親(うじちか)とその同盟者の北条氏綱(うじつな・伊勢宗瑞/そうずい/の子)と対立していたが、それと抗争していた武蔵の扇谷上杉朝興(おうぎがやつうえすぎともおき)から支援を求められた。扇谷上杉家から援軍を要請されると、2月に郡内に出陣し、北条領の相模津久井郡に侵攻する一方、自身は3月に扇谷上杉朝興と合流するため武蔵秩父郡に進軍、7月には武蔵中部に進軍し、北条方になっていた岩付(いわつき)城(さいたま市)を攻略した。北条家とはその後も、同5年・同6年と抗争を続けた。

 

 同7年には、信濃佐久郡前山城(佐久市)の伴野貞慶(とものさだよし)から支援を求められ、信濃に出陣したが、伴野家が敵対勢力と和睦したため、善光寺(長野市)に参詣して帰陣している。またこの年には今川家と和睦を成立させた。信虎はこれを、甲斐国中に「走馬(そうま)」で触れ回らさせている。世間では、対外戦争の継続に嫌気がさしていたような状況になっていたのであろう。翌享禄元年(1528)には、諏訪家から追われていた下社(しもしゃ)諏訪家を復帰させるため諏訪に進軍したが、諏訪頼満(みつより)・頼隆(よりたか)父子に敗北している。

 

 享禄3年に信虎はまた北条家と郡内で抗争している。北条家との抗争が深まるなか、信虎は扇谷上杉家との同盟強化のため、上杉朝興の叔母(山内上杉憲房/のりふさ/の後室)を別妻に迎えている。

 

 しかし対外戦争が続いたためか、国衆・重臣には不満が生じたようで、同4年に重臣の飯富(おふ)家、東郡栗原家や逸見今井家らが信虎から離叛(りはん)した。今井家は諏訪家に支援を要請し、諏訪軍が進軍してきた。今井家・諏訪家に対しては塩河原(韮崎市)で迎撃し、勝利した。栗原家に対しても勝利した。翌天文元年(1532)9月、信虎は今井家の本拠・浦城(北杜市付近か)を包囲し、降伏させた。この今井家の降伏の後、もはや国内勢力との抗争はみられなくなった。甲斐の内乱は開始から40年が経っていたが、ここにようやく終息をみた。

 

戦国大名化を遂げ本格化する対外戦争

 

 天文2年、信虎は扇谷上杉家との同盟をさらに強化し、嫡男太郎(晴信)の妻に朝興の娘を迎えた。しかし逆に同3年に今川・北条両家から甲斐への侵攻をうけた。同4年7月、信虎はそれへの報復のため駿河に向けて出陣したが、8月に今川氏輝(うじてる/氏親の子)に河内万沢(南部町)で迎撃された。また今川家支援のため北条氏綱から郡内山中(山中湖村)に進軍をうけ、迎撃にあたった弟の勝沼武田信友らが戦死した。

 

 信虎は手痛い敗北を喫したため、9月に諏訪頼満との和睦を図っている。この頃、信虎は陸奥守に任官した。嫡男晴信に左京大夫の官職を譲るための準備とみなされる。晴信は翌年3月に元服し、将軍足利義晴(よしはる)から偏諱(へんき)と官位を与えられることになる。

 

 ところが天文5年3月の今川氏輝の急死によって、今川家で家督をめぐる内訌(ないこう/花蔵の乱)が生じた。そうしたなか6月に、家臣前島氏が信虎に背いたため切腹させられ、それをうけて「一国の奉行衆」が甲斐から退去するという事件が起きた。詳細は不明だが、信虎の統治に家臣には不満が生じていたのであろう。その6月に花蔵の乱は北条氏綱の支援により、義元(氏輝の弟)が勝利した。

 

 これをうけて信虎は、義元と同盟を図った。同6年2月、信虎は今川義元と同盟を成立させ、長女(定恵院殿)を義元に嫁がせた。北条氏綱はこれに激しく怒り、今川家との同盟を破棄、さらに駿河東部に侵攻し、占領した(河東一乱/かとういちらん)。信虎は御厨に出陣して義元を支援した。北条家との抗争は同8年まで続いたが、その後は小康状態となった。

 

 信虎は対外戦争を継続するようになった。それは戦国大名として存在するようになったことにともなう。しかし他国の戦国大名との抗争は、いまだ国境地域での抗争にとどまり、国外侵略を展開するようなものではなかった。そこに度をかさねて軍事動員をうける国衆や家臣には、負担に耐えかねたためであろう大きな不満が生じるようになっていた。信虎はそれを解決しなくてはならなかった。

 

監修・文/黒田基樹

『歴史人』12月号「武田三代」より)

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