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源頼朝【前編】~ 平家打倒を成し遂げた “ 源氏の御曹子 ” ~

『鎌倉殿の13人』主要人物列伝 第2回


平治の乱の直後、この男は殺されていたはずだった。敗軍の将の嫡男として生き延びた男は、配流先の伊豆で牙を研ぎ、やがて父の仇敵に刃を振り下ろすのであった。「鎌倉殿」こと源頼朝の人物像に迫る。


 

源平合戦では弟の範頼、義経に大きな兵力を預け平家打倒の戦いを命じるなど、司令官としての立場に徹した頼朝。その間、東国武士団の棟梁として、鎌倉で武士政権の樹立に奔走する。イラスト/宇野市之丞

 源頼朝は久安3年(1147)、清和源氏・源義朝(よしとも)の三男として生まれたが、異母兄は平家との戦いなどでいずれも死亡してしまったことや、母の出自の関係などで嫡男とされた。

 

 平治の乱(1159)で平清盛に敗れた父・義朝は、東国に逃れる途中で殺害され、捕らわれた頼朝は斬罪されるところを清盛の母・池禅尼(いけのぜんに)の助命嘆願によって一命を救われ伊豆国蛭ヶ小島(ひるがこじま)に配流(はいる)となった。伊豆では、平家方であった土地の小豪族、伊東祐親(すけちか)・北条時政らの監視の下で20年という歳月を送り、その間に時政の娘・政子と駆け落ちのような結婚をした。

 

 治承4年(1180)、後白河法皇の第3皇子・以仁王(もちひとおう)の「平家打倒」の令旨(りょうじ)が頼朝にも達した。この年の8月、頼朝は伊豆・相模の武士団を集めて平家打倒の挙兵をした。挙兵には、舅であった時政の後ろ盾もあった。緒戦には勝利したものの、石橋山合戦に敗れた頼朝は箱根山から安房国に落ち延びた。ここで頼朝は新たに土肥実平(どひさねひら)・三浦義澄(よしずみ)・千葉常胤(つねたね)・上総介広常(かずさのすけひろつね)などの援助を得て反撃に転じ、上総・下総から武蔵に行き、畠山・河越・江戸氏など在地武士団を配下に収めて鎌倉に入った。

 

 頼朝の挙兵を怒った清盛は息子の平惟盛(これもり)を総大将とする2万の大軍を東下させた。駿河国・富士川で対峙した平家軍は、甲斐源氏・武田信義らの参戦による夜討ちで驚いた水鳥の羽音に恐怖し、ほとんど戦わずに逃げてしまった。

 

 この後、頼朝は奥州平泉からはるばる参戦した異母弟・九郎義経(よしつね)と対面を果たし、さらには敵対する常陸・佐竹氏(清和源氏の一族)を討ち、上野・新田氏、下野・小山氏など有力武士団を服属させると、鎌倉に1つの地方政権を樹立した。

 

 頼朝は、家臣団を「御家人」とし、ギブアンドテイクである「奉公と御恩」(戦功への論功行賞としての所領給与)を発展させて「守護と地頭」を置いた。

 

 政権には、御家人の統率機関「侍所」を置き和田義盛をその別当(長官)に任じるなど徐々に政治機構も整えた。だが尾張・墨俣川(すのまたがわ)での戦いでは、平氏の東征軍に鎌倉軍は敗れ、膠着状態となった。

 

 一方で同じ治承4年に信濃で挙兵した源(木曽)義仲が、信濃・越後に進出し北陸道を制圧、寿永2年(1183)、平氏を逐って上洛した。だが義仲は後白河法皇と不仲となり、頼朝は法皇と密約を結ぶ。これによって、頼朝は「東国軍事権・裁判権」を手に入れる。頼朝は、弟の範頼・義経に軍勢を与えて上洛させた。義経は、元暦元年(1184)正月、義仲を宇治川合戦で敗死させた。

 

 ここから頼朝代理としての義経の活躍が始まり、一の谷の戦い、屋島の戦いで平家軍に勝利し、さらには壇ノ浦合戦で平氏を滅亡させた。この勝利によって、頼朝は従2位に叙せられ公卿に列したが、この頃から徐々に弟・義経との不和・対立が表面化するようになっていくのだった。

 

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江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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