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世界にはどれくらい「親中国」がある? 中国は「頼れる開発パートナー」なのか?


  

 現代の国際情勢を語る上で、中国の存在感は無視できない。経済的な台頭から軍事的な拡張、さらには独自のデジタル技術の普及に至るまで、中国は多方面で世界に影響を及ぼしている。しかし、その影響に対する評価、すなわち「親中」か「反中」かという視点で見れば、世界は鮮やかなコントラストを描きながら二極化の様相を呈している。

 

 先進諸国、特にG7を中心とする西側諸国においては、中国に対する眼差しは一般的には厳しい。日本、アメリカ、そして欧州の主要国では、中国に対して「好ましくない」という感情を抱く層が過半数を上回っている。これは、人権問題や台湾情勢を巡る地政学的リスク、さらには貿易摩擦といった懸念が根強いためである。特に日本においては、中国への好感度は依然として極めて低い水準に留まっており、地理的な近接性がかえって警戒心を強める要因となっている。

 

 対照的に、いわゆる「グローバルサウス」と呼ばれる新興国や途上国に目を向けると、全く異なる風景が広がっている。東南アジア、アフリカ、中東、そしてラテンアメリカの多くの国々にとって、中国は「価値観を押し付けない巨大な投資家」であり「頼れる開発パートナー」である。中国が推し進める巨大経済圏構想「一帯一路」は、インフラ整備を渇望するこれらの国々にとって、西側諸国による厳格な融資条件を回避できる魅力的な代替案となっている。例えば、タイやインドネシア、ケニアといった国々では、中国の経済的寄与が高く評価され、市民レベルでもポジティブな評価が目立つ。

 

 また、2025年に入り興味深い変化も見られる。若年層、いわゆるZ世代の間で、中国に対する評価が従来の世代よりも改善傾向にある国が増えている。これはTikTokに代表される中国発のデジタル文化や、安価で高性能な中国製スマートフォンの普及が、政治的な文脈を切り離した形での親近感を生んでいるためと推測される。

 

 結局のところ、世界にどれほどの「親中国」があるのかという問いに対する答えは、対象となる国の経済発展の段階や、歴史的な背景によって180度異なる。西側メディアが報じる「中国包囲網」という言説は、グローバルサウスの視点から見れば、むしろ中国を軸とした新しい秩序の形成過程における、旧勢力の抵抗に過ぎない。世界は今、価値観の共鳴に基づく「親中」と、現実的な利益に基づく「親中」が複雑に絡み合い、単純な多数決では測れない多極的な均衡状態にあるといえる。

イメージ/イラストAC

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プロバンスぷろばんす

これまで世界50カ国ほどを訪問、政治や経済について分析記事を執筆する。特に米国や欧州の政治経済に詳しく、現地情報なども交えて執筆、講演などを行う。

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