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縄文人は狩猟した動物や山菜を食べるだけではなく豆などの栽培を行っていた⁉【縄文最新研究】

今月の歴史人 Part.2


現在、縄文時代の歴史は最新研究によって、さまざまな事実がわかってきた。


 

【最新研究①】
狩猟した動物や木の実、山菜を食べるだけではなく豆などの栽培を行っていた

 

■豆栽培を行った縄文人!末期には稲作もスタート

 

登呂遺跡
戦後、発掘されたこの弥生遺跡で 水田の痕跡が見つかったことで稲 作は弥生時代からはじまったとい う見解が広まったが、九州地方の 縄文時代後期末の遺跡からは稲作 の痕跡が見つかっている。

 

 これまでの一般的なイメージでは縄文人は、狩猟採集が主な生業であったが、水田でのイネの栽培は、北部九州では縄文時代後期末頃からすでに開始されていた。

 

 水田での米作りの前段階として、畑作で、雑穀や陸稲の栽培があり、その栽培技術の基盤の上に、水田でのコメ作りが導入されたとかつて考えられていたが、発掘された縄文人の人骨のコラーゲンの炭素窒素同位体比による古栄養学的研究の成果からは、雑穀を主要な食糧とした傾向はうかがわれない。

 

 また、土器に残された豆類などの痕跡から、栽培がおこなわれていたことが明らかになっている。しかし、安定的にエネルギーを得るためには、デンプン質の食料に依存するしかない。

 

 この食料資源としては、従来から想定されているように、ドングリ類やトチノミなどの堅果類や、ゆり根などの根茎類が出土遺物からも明らかになっている。

 

 こうした、貝塚などから出土するシカやイノシシなどの獣骨、鳥骨、低湿地遺跡から出土するドングリやトチノミなどの出土資料からみて、縄文時代はいぜんとして狩猟採集民であったとみて間違いない。

 

 

【最新研究②】
縄文時代開始は1万2000年前とされていたが、実は1万5000年前にははじまっていた

 

■近年の年代測定技術の向上で年代測定がより緻密に

 

 縄文時代は、約15000年前に始まり約2400年前まで続いた。縄文時代の始まりの年代については、近年の年代測定技術の向上のたまものである。縄文時代の年代は、遺跡から出土した木材や貝殻、獣骨等に含まれる放射性炭素14Cを測定することで得られる。炭素は自然界に普遍的に存在する元素である。

 

 このうち、極々微量の放射性同位体14Cは、いったん生物体に取り込まれたのち、一定の割合で減衰する。つまり、生物が人間に補色されてから、発掘されるまでの年代が測定値として算出される。近年は、縄文時代の遺跡から出土した住居の柱をもとに、樹木の年輪を数えていく年輪年代と、その木材を放射性炭素法で測定した年代を交差させる方法が導入されて飛躍的に精度が向上した。

 

 これに加えて、最新の研究成果として、福井県の三方五湖(みかたごこ)のひとつの水月湖(すいげつこ)の湖底の堆積層を分析した年縞(ねんこう)年代も導入され、日本列島各地の火山灰層の年代が、一連のタイムスケールの中で認識されるようになり、さらに、縄文時代の年代が正確に比較されるようになっている。

 

監修・文/武藤康弘

歴史人2023年7月号「縄文と弥生」より

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