「金髪の呂布」が敵を馬ごと両断! 貂蝉は呂布の妹!? ジャンプ黄金期。ド迫力の三国志マンガ『天地を喰らう』は、なぜ早期終了した?
ここからはじめる! 三国志入門 第129回

DIGITAL JUMP COMICS『天地を喰らう』第7巻(最終巻)の表紙 ©本宮ひろ志/集英社
■「桃園の誓い」ならぬ「がれきの誓い」?
三国志、三国志演義を題材とした漫画作品に親しんだ方は少なくないはず。『パリピ孔明』や『孔明のヨメ。』、『三国志凶漢伝 暴喰の董卓』など、現在も連載中のタイトルがあるが、やはり元祖の横山光輝『三国志』(1971~1987年)で初めて触れたファンがもっとも多いと思われる。
その横山光輝版が完結する以前、同時期の三国志漫画黎明期に『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『天地を喰らう』(原作・本宮ひろ志)をご存じだろうか? もしかすると同作をもとにしたゲームで三国志ファンになったという方もおられるかもしれない。今回は、その「本宮版三国志」を振り返りたい。
本作の主人公は劉備。貧しいワラジ売りとして糊口をしのぐ貧乏少年である。ただし、正義感あふれる親孝行な横山版とはまるで違う。コソ泥を見つかって村人にタコ殴りされ、河に投げ込まれて、流れ者の関羽に救われるという本宮作品ならではの独自展開だ。
そして第1話から諸葛亮(孔明)も登場。天上界で孔明と竜王の娘が交わる、幻影の蛇やムカデに劉備が身体を喰い荒らされるなど、序盤はエロスとファンタジーが入り混じった創作の世界。その後、108の魔星が地上に降り注ぐなど「水滸伝か?!」と思わせる要素まで入り、劉備が地上界に帰ってきて関羽と再会すると、少しずつ「三国志らしい」展開になる。
関羽が青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)で城門をたたき壊し、たった一騎で300人を退散させて城を奪う場面は、さすが本宮作品というべき豪快さ。そこへ乗り込んできた張飛と関羽が一騎討ちの果て、竜巻に破壊された城跡で3人は義兄弟の盃を交わす。「がれきの誓いだ。へっへ、俺たちに似合いだな!」と笑いあうのが無骨で格好いい。
そして物語は「黄巾(こうきん)の乱」を経て、洛陽を乗っ取った董卓軍と、曹操や袁紹、孫堅が率いる「反董卓連合軍」との戦いに移る。ここでは原作通り、董卓軍の武将・華雄(かゆう)が立ちはだかり、連合軍の将を次々と斬り捨て、関羽との一騎討ちになるという展開。2頭の馬にまたがった関羽が突き進むという、これまた豪快なシーンだ。
■金髪の呂布と貂蝉が兄妹という衝撃の設定!
そして汜水関(しすいかん)・虎牢関(ころうかん)で連合軍と対戦するのが最強の男、呂布。これが個性的なキャラで、西洋人との混血のため金髪・碧眼というルックスである。さらに、貂蝉は呂布の妹として登場。兄と同じ金髪を生やした絶世の美女で、なんと董卓の軍師のような働きをする。
ぶっ飛んだ設定である。1985年に金髪の曹操が登場する三国志アニメが日本テレビで放送されたが、もしや本作の呂布をパクったのではないかと勘繰ってしまう。
この呂布の強さも抜群で、彼は兵を馬ごと両断し、一度に数人の敵兵の首や胴が飛ぶ。後年のゲーム「真・三國無双」の先を行く、いやそれ以上のド迫力描写だった。またユニークなのは董卓軍と連合軍が「鼎(かなえ)戦」で激突、互いに一軍から三軍を出し合って真正面からぶつかりあうという展開が面白かった。
この董卓軍との戦いで孫堅が戦死し、李傕や郭汜が劉備軍に討たれるなどの展開は原作と異なるが、反董卓連合の瓦解、その後に董卓が倒れるまでは充分に三国志漫画として読ませる内容だった。
ところが呂布が長安を占拠し、劉備のもとへ孔明と趙雲が合流して盛り上がりを見せる・・・かと思いきや、その後急速に物語は収束に向かう。登場人物のほとんどが強制退場、本当に「終わらせるため」だけに描かれたような怒涛の最終回であった。
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