「金髪の呂布」が敵を馬ごと両断! 貂蝉は呂布の妹!? ジャンプ黄金期。ド迫力の三国志マンガ『天地を喰らう』は、なぜ早期終了した?
ここからはじめる! 三国志入門 第129回

DIGITAL JUMP COMICS『天地を喰らう』第6巻の表紙 ©本宮ひろ志/集英社
■唐突に終わった理由は「人気低迷」ではなかった!
漫画の連載終了は、だいたいが人気低迷による打ち切りが理由。原作者の本宮ひろ志 氏は本作の第7巻(最終巻)あとがきで「愛着はあったが、ジャンプのアンケートで順位が低かった」という趣旨で終了の理由を書いている。
ところが作者の自伝(『天然まんが家』)では別の理由をあげる。三国志ものに挑戦したのは「自分がまだやったことのなかったジャンルに挑戦するため」で「真剣に描いた作品」などと同作への思い入れも綴られている。
「導入部は自分でもすごくおもしろく描けたと思う。(中略)ところが本編の『三国志』に入った時点で、どうも『三国志』の世界に縛られてしまい、自由に描くことができなくなった」「しかも『三国志』という物語は、とにかく長い。そのまま続けたら、おそらく十年ぐらいはかかるだろう。それを想像しただけで、もう嫌になった」といった回想をしている。
当時の本宮氏は人気があろうが編集者から泣きつかれようが、やめたくなったら連載を終えていたという。確かに歴史ものは詳しく知れば知るほど、深みに入るほど「縛り」が出てくる。それまで作者は資料をあまり読まず、吉川英治『三国志』も2巻でやめたという。しかし連載中、当時も色々あった三国志作品に接したのだろう。まことに惜しい話だ。
■ジャンプ黄金期の順位でも堂々の上位だった
「人気低迷」についても確かめるべく、当時の『週刊少年ジャンプ』での掲載順位を調べた。まず本作は全62話のうち第1話の1983年27号から3週連続、その後も計9回にわたり巻頭カラーを飾っていた。
他の週の掲載順も常に3~6番目を行ったり来たりで、1984年37号(連載終了の前週)まで一度も7番目以下に落ちていない。同誌の掲載順が人気と即直結していたとは限らないが、やはり連載終了が近づいた作品は、多くが巻末に近い10番目以降の掲載順になっていたものだ。
ちなみに、「天地~」が終了した1984年38号の上位4作は『キャプテン翼』『キャッツ・アイ』『キン肉マン』『北斗の拳』。以降の順位にも『ハイスクール!奇面組』『Dr.スランプ』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』といった錚々たる作品ばかり。これら黄金期の作品群と『天地を喰らう』は堂々渡り合っていた。
いっぽう、作者自身が記したところでは『天地を喰らう』の後に書いた『赤龍王』(1986~1987年)は「生まれて初めて『連載をやめてくれ』と編集者からいわれた」作品だそうだ(同『天然まんが家』参照)。
同作は司馬遼太郎の『項羽と劉邦』に影響された作者が意欲をもって取り組んだが、第22話以降の掲載順は10番目以降に落ち、浮上しないまま終わる。作者は憤慨し「ジャンプ」を去ったが、のちに単行本2冊の分量を書きおろして完結させる。
そして、この2作は以降の『猛き黄金の国』『こううんりゅうすい〈徐福〉』など氏の歴史漫画の源泉となった。こうした事実を改めて知ると、ファンのひとりとして今からでも『天地を喰らう』の続編が読みたいと願ってしまう。
■5年後、テレビゲームとしてまさかの「復活」
董卓の死をもって終了した『天地を喰らう』の続編が漫画で描かれることはなかったが、数年後の1988年以降に思わぬ形でよみがえった。それが同作を原典とした『天地を喰らう 魔界三国志』(PC88・ウィンキーソフト)はじめ、ファミコン版のRPGおよび、アーケード版のアクションゲーム(カプコン)などである。
ファミコン版の開発に携わった関係者によると、ゲーム化にあたっては版権こそ取ったものの、原作者サイドからの絵の描きおろしといった協力は、ほとんど得られなかった(元・カプコンの岡本吉起氏のYouTubeより)。
「好きに描いてください」といわれたメーカーサイドは、原作に未登場の人物画やパッケージ画にいたるまで自社制作で乗り切ったという。ストーリーも『三国志演義』が典拠で『天地を喰らう』の要素は、ほぼ絵のみ。馬超や黄忠、魏延、孫権といった人物たちの絵などは原作者ではなく、カプコンによる描きおろしだった。その事実を知ったとき、ファンとして少々残念に感じたものである。ただ、アーケード版『天地を喰らう』『天地を喰らうII 赤壁の戦い』は、それらのキャラクターが画面狭しと動きまくるアクションゲームで、あの原作の豪快な雰囲気がよく再現されていた。現在はNintendo Switchなどでもプレイできるため、お時間があれば遊んでみていただきたい。
※今回、原作者サイドに取材を申し入れるも残念ながら実現しなかった。そのため記事内容は筆者による推測を交えた内容であることを書き添えておきたい。また、ゲームについてもファミコン版についてのみの内容。機会あれば他の関係者などにお話をうかがい、詳しく書く機会が持てたらと思う。
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