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一回行けば忘れようがない! 紅葉に彩られた「奇岩のパノラマ」が広がる北陸の名刹

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第39回】


■本当に絵になる場所が多い那谷寺

 

 冬の手前頃はとくに寺社を訪れる人が増えるシーズンではないかと勝手に思っています。というのも、紅葉を見るために普段は寺社巡りをしない人も寺社を選びがちだからです。大学生の時は京都に住んでいたので、秋口の京都の混雑はシャレにならないものがありました。インバウンド需要がそこまでではない2000年代中頃でそんな調子ですから、令和の今頃に京都の紅葉の名所を訪れるのは骨が折れそうです。

 

 というわけで、京都からは離れた紅葉が映えるお寺を紹介します。もっとも、伽藍と“もみじ”のコントラストなんてものは日本中に存在するわけで、伽藍以外の目立つものがある場所を選びました。

 

 石川県の小松市からバスに乗って郊外に向かいます。終点の那谷寺(なたでら)で降ります。境内に入ると、緑に苔むした庭が広がっていて、これはこれで見事ですが、目的のものはさらに先にあります。

 

 しばらく進むと、奇岩としか表現しようのない岩壁が現れます。一言で表現する言葉がないのですが、とにかく変な形の岩です。遊仙境という名前がつけられていますが、たしかに神仙が遊んでてもおかしくない見た目です。

 

 この遊仙境は遠目に眺めるだけでも面白いですが、中を歩いていくことができます(※1)。ちょうど岩壁に一本の縦線を引くように、稲荷神社の参道も続いています。一種の体感型アトラクションですが、安全が保証されてるわけではないので本当にすべらないように気をつけましょう。

 

 奇岩の説明ばかりで紅葉の話をしていませんが、広い境内の位置によっては、紅葉のさらに奥に奇岩がそびえている構図で撮影できます。岩のほうのインパクトが強すぎて紅葉が薄れてしまうかもしれませんが、記憶に強く残ること間違いなしです。

 

※1 現在は安全と景観保護のため立入禁止となっています。

那谷寺のシンボル奇岩遊仙境

 遊仙境以外にも三尊石(さんぞんせき)と名付けられ、注連縄を張られた岩もあって、こちらも名前の通り、神々しいです。ほかにも懸造(かけづくり/清水の舞台みたいな構造の建物)の伽藍も目を引きますし、那谷寺は本当に絵になる場所がたくさんあります。

 

 たまに「いくつも寺社に行って、記憶が混ざることがないのか?」と質問されることがあります。はっきり言って記憶が混ざる時はあります(笑)。とくに一日に何箇所も回ったような時は数年後にぐちゃぐちゃになりがちです。ですが、一方で絶対に混ざりようのない場所もあって、那谷寺は一回行けば忘れようのないお寺です。

 

 もちろん、どこの寺社に紅葉を見に行ったか混ざってしまう心配もありませんので、秋には那谷寺を参拝してみてはいかがでしょうか?

 

大悲閣と呼ばれる懸造の建物

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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