電車のホームをご神木が突っ切る!? 日本で一番、交通安全にご利益があるかも 萱島神社/大阪府寝屋川市
神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第35回】
■駅直結どころか駅そのものがご神木?
今回は変わったところに生えているご神木を紹介いたします。もっとも、変わったところといっても、崖の横から生えているとか、波打ち際近くに生えているとか、元の場所が特殊というわけではありません。木の近くは普通の平坦地です。ただ、その平坦地が後からとある施設になったので、後天的に「変わった場所のご神木」になってしまったわけです。

萱島駅の遠景。この角度だと駅の奥に大きな木が生えているように見える
大阪と京都を結ぶ私鉄、京阪電鉄の萱島駅(かやしまえき)に目的のご神木はあります。のぼり電車の高架ホームに降りると、ホームと屋根を貫いた立派なご神木が真っ先に目に入ります。そう、ホームを突き破ってご神木が生えているんです。このご神木は樹齢700年ほどのクスの大木で高さは約20メートルあるそうです。
萱島駅自体はベッドタウンの駅なので、「車内から何度も見てきたけど、大木の下の部分がどうなってるか知らない」という方も多いのではないでしょうか。僕もかつて京阪沿線に住んでいましたが、萱島駅で降りる用事がなかったので長らく確かめたことはありませんでした。今回、大木の下の部分を確認するために降りて、地上から大木が生えているはずのところに回り込んでみました。

萱島駅のホームの屋根から突き出るクスの大木
駅を出て左折すると萱島神社という神社が意外なところにありました。神社の境内の一部を高架の線路が通っているのではなくて、社殿はほぼ高架ホームの真下だけにあります。まるで高架下にできた店舗のようです。もちろん、くだんのクスの大木もお参りできるようになっていて、「大楠大明神」ののぼりが立っています。
鉄道会社がホームに設置していた案内板や新聞記事によると、昭和47年(1972)から始まった高架化工事のために、神社境内と隣接している土地も買収されたそうです。本来ならご神木も切られることになっていたようです。ですが、地元住民から木を残してほしいという要望が多数寄せられました。その結果、ご神木がホームの一部を突き抜けるという形で解決が図られたわけです。

ホームの真下にある萱島神社の社殿
なお、同じ案内板に神社は「昭和55年夏に再興された」とあるので、少なくとも神社自体は一回停止して、復活したそうです(このあたり、何をもって「神社」と定義するかでも変わってきそうですが。ご神木が信仰されてるだけでも神社と言えなくはないので)。とにかくクスの大木が駅に取り込まれたあとに、神社も無事に再興されたようです。
今の時代、もし神社や寺を完全にフタするように高架の鉄道や道路が通れば批判の対象になりそうですが、このケースはむしろ、高架下のスペースを使って、神社が本格的に復活したように思います。これからも神社とご神木には地域と駅を見守っていってほしいです。個人的に、日本一交通安全のご利益がありそうなご神木じゃないかなと考えています。まさに駅直結どころか駅そのもののご神木です。