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通行自体が法的に禁止された神社 洗馬神明宮/長野県塩尻市

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第31回】


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


すぐ先にあるのに渡れない、完全に寸断された参道

 

 近代に線路などが通ったせいで、本来寺社まで通っていた道が寸断されたケースはこの連載でも以前に取り上げましたが、今回は通行自体が法的に禁止されてしまい、使えなくなった事例を紹介します。これも写真を見てもらったほうがわかりやすいので、まずはこちらをご確認ください。

眼の前に神社が見えるけれど、線路で参道が途切れている

 奥には神社を示す鳥居も、その先に続く石段もはっきりと見えます。実際、社殿まで石段は続いています。ですが、参道を分断している線路に立ち入れる踏切はない! 線路横断禁止の看板が立っているように、これは遮断機のない踏切ではなくて、純粋に入ってはいけない場所です。線路のせいで見えてる神社に行けないという場所はいくつもありますが、ここまで行けそうで行けない神社はあまりないと思います。

 

 石段の奥にはいかにも神社のありそうな杜(もり)が広がっていますし、山にある小さなおやしろや祠(ほこら)といった小さな施設があるだけとは思えません。その集落の鎮守クラスの神社があるはずです。せっかくなので大回りして参拝することにしました。

 

 説明が遅れましたが、この神社は長野県塩尻市の洗馬(せば)神明宮です。洗馬は中山道の宿場の一つです。鉄道のせいで立ち入れなくなったこの神社の参道も、本来は宿場の南端付近から東の高台に進んでいくようなルートになっていました。

 

洗馬神明宮の拝殿

 神社に向かうだけなら南側から回り込むほうが楽ですが、宿場の北側のほうまで散策したので、そちらから回りました。宿場から東の高台を走る国道19号線まで少し坂を上がります。この国道を400メートルほど南に進むと、絶対に神社があるだろうというような林が右手に見えます。位置からしてもこれだと思って入っていくと、無事に洗馬神明宮にたどり着きました。

 

 神社側からどこにも通じてないはずの参道の石段を下っていきました。石段から洗馬宿を見下ろせますし、宿場を長らく見守ってきたのでしょう。つながってない道にしては石段もきれいで、掃除の手が入ってるとしか思えません。あくまでも可能性の話ですが、石段の横にはお墓が並んでいるので、お墓に行くための道として現役で使われているのではないでしょうか。あるいは……立入禁止なのに線路を横断している人がいるのでしょうか。そもそも立入禁止ですし特急車両も走行する区間ですから、正しく回り込んで参拝するべきですが……。真相は不明ですが、とにかくルールを守ると裏口からしか訪問不可能な神社なのは間違いないです。

 

神社から線路を見下ろす

 

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過去記事

森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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