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神がかり的に沿線を盛り上げた「たま大明神」が祀られている神社 たま神社/和歌山県紀の川市

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第30回】

 


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


 

たま電車ミュージアム号(2022年)

■どこみても猫づくし

 

 今回取り上げる神社は鉄道でのアクセスが非常に便利です! 駅前にある神社とかそういったレベルではありません。電車を降りたホームからすぐに参拝できます。むしろ駅の外に出ると参拝できません。

 

 参拝のために、まず鉄道で和歌山駅に行って、そこから和歌山電鐵に乗り換えます。訪問したのは2022年の秋ですが、その時点で乗り場からスーパー駅長たまの額が並んでいます。すでにおわかりの方も多いと思いますが、和歌山電鐵といえば猫駅長で異例の盛り上がりを見せた鉄道会社です。

 

 終点の貴志駅で降りると、ホームにはいくつか小さなおやしろが並んでいます。このうち一つがたま駅長が祀られているたま神社です。鳥居の扁額に「たま」と書いてありました。こちら、たま駅長が亡くなった2015年に創建された神社です。駅の説明板には御祭神がたま大明神と書いてあります。御神徳の欄にも、縁結び、商売繁盛、学業成就、開運出世、安全祈願などの文字が並んでいて、ケチのつけようのない神社です。たま大明神は和歌山電鐵および和歌山への観光客数を大幅に増やした方ですから、なかでも商売繁盛や開運出世の現世利益は折り紙つきかと思います。

 

たま大明神。扁額に「たま」とある

 貴志駅の駅舎は猫っぽい顔のポップな観光地らしいものになっていて、カフェなども併設されています。現在では世界から観光客が訪れる駅ですが、これもすべてはたま駅長からはじまりました。世界を動かしたとてつもない猫ちゃん、いえお猫様です! 僕が訪問した際には現駅長のニタマ駅長が業務を行っていました。今後も元気に駅長業務を行っていただきたいです。かつて駅を訪れた時はまだたま駅長ブームのようなことも起こる前で、この路線もそこまで目立たないローカル線という雰囲気でした。それがここまで見違えるとは……。鉄道ファンとしても本当にうれしいです。

 

「たまII世駅長」を襲名した二タマ駅長(2022年)

 また、和歌山電鐵といえば、豪華で派手な鉄道車両も有名です。とくに、たま電車ミュージアム号は随所にたま駅長の写真やイラスト、グッズなどが飾られていて、もはや動くお屋敷です。猫には興味がないよという人でも確実にテンションが上がるはずです。こんなに派手な電車に特別料金も不要で乗車できるだけでもお得です。

 

 なお、和歌山電鐵沿線には文句なしの古社が多数あるので神社巡りにも最適です。日前宮(にちぜんぐう)駅が最寄りの日前宮、竈山駅が最寄りの竈山神社、伊太祈曽(いだきそ)駅が最寄りの伊太祁曽(いたきそ)神社(駅名と神社名に違いアリ)の3社がよく知られています。僕もこの3社を巡るのに合わせて、たま神社も参拝しました。たま大明神様、和歌山電鐵、また全国の鉄道会社を末永く繁栄させてください!

 

全国の木材関係者のお詣りが多い伊太祁曽神社

 

 

 

 

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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