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日光東照宮×平等院鳳凰堂=地中海!? 有名建築の「オールスター」みたいな寺院が広島県にあった!

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第38回】


■豪華な建築物が立ち並ぶ昭和のお寺

 

 広島県と愛媛県の間を車で島めぐりができる人気観光地、しまなみ海道。そんなしまなみ海道の広島県側に生口島(いくちじま)という島があります。国宝の向上寺(こうじょうじ)三重塔がある島なので、古建築ファンや寺社巡りが好きな人はご存じかもしれません。この国宝から徒歩で行ける距離に、とにかく目立つ大寺院の観光地があります。耕三寺(こうさんじ)という浄土真宗の寺院です。

 

向上寺三重塔と海。三重塔は国宝に指定されています

 この耕三寺、実業家が母親の死後にみずから僧籍に入り昭和になってから造営をはじめた寺院で、歴史としては15世紀の三重塔を有する向上寺と比べてかなり浅いです。しかし、豪華さと満足度では全然引けをとりませんし、古建築ファンの人でもテンションが上がるはずです。というのも、このお寺は寺内の多くの建築が日本の著名な古建築の影響を受けて、作られているからです。

 

まるで国宝の耕三寺孝養門

 とくに孝養門(こうようもん)という名前の門は日光東照宮の陽明門(ようめいもん)そっくりです。本堂は宇治の平等院鳳凰堂を元にしていますし、八角円堂(聖徳堂)はサイズは違うものの法隆寺の夢殿(ゆめどの)が元になっています。いろんな時代の有名建築によって伽藍が構成されているというキャラの立った寺院なわけです。その建築も雰囲気だけ似せたハリボテみたいなものではなくて、本格的に再現されています。多くの建築が登録有形文化財に選ばれているのも納得です。

 

 ここに来れば、日光東照宮と平等院鳳凰堂に同時に行った気にもなれます。ある意味、有名建築のオールスター選抜みたいな寺院で、そんなことをハイレベルにやっている場所は日本を探してもほぼ類例はないはずです。

 

平等院鳳凰堂をモデルにした本堂

 しまなみ海道の旅行者の中には、日本の寺の建築自体に興味はないという方も多いとは思います。ただ、そういう人でも満足できる要素も耕三寺にはちゃんとあります。それが「未来心(みらいしん)の丘」という広大な庭園です。

 

 歴史を感じる和風の庭園にも興味がないと思った方、ご安心ください! こちらの庭園、白い大理石で構成されているんです。内部を歩くと、瀬戸内海の温暖な気候も相まって、本当にイタリアの地中海にでも来たような気分になります。海外旅行してきたと言って、友達に写真を見せれば7割方信じてしまうと思います。

 

 どの層でも観光が楽しめる、そんな素晴らしい寺院です。周囲にはアナゴ料理を楽しめるお店も多いですし、しまなみ海道を存分に満喫できます。天気のいい日にぜひお出でください。

 

地中海をイメージさせる未来心の丘

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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