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【戦国武将のルーツをたどる】独眼竜・伊達政宗を生んだ奥羽の覇者「伊達家」は政宗以前から猛将が継承し、東北で勢力を伸ばし続けていた!?

戦国武将のルーツを辿る【第3回】


日本での「武士の起こり」は、遠く平安時代の「源氏」と「平家」に始まるという。「源平」がこれに当たるが、戦国時代の武将たちもこぞって自らの出自を「源平」に求めた形跡はある。だが、そのほとんどが明確なルーツはないままに「源平」を名乗ろうとした。由緒のあるか確たる氏素性を持った戦国大名は数えるほどしかいない。つまり、戦国時代には槍一筋で成り上がった武将・大名がほとんどであったことになる。そうした戦国武将・大名家も、自分の家のルーツを主張した。絵空事も多いが、そうした主張に耳を貸してみたい。今回は東北地方を席巻した「伊達家」の起源と歴史をたどる。


 

伊達政宗像

 

 鎌倉時代初期の文治5年(1189)に、源頼朝が奥州藤原氏(清衡・基衡・秀衡)の4代・藤原泰衡(ふじはらのやすひら)を討ち滅ぼした戦い「奥州征伐」には、多くの鎌倉御家人や関東の地方豪族が参戦した。常陸国伊佐庄中村に住んだ地方豪族・(藤原)伊佐朝宗(ともむね)も、4人の息子たちとともに出陣して武功を上げた。その戦功によって、源頼朝から陸奥伊達軍を与えられた。その時に、郡名を名乗って「伊達氏」を称した。

 

 この時代の地方武士たちには、自らの出自に箔(はく)を付けようと「源平藤橘」の名字から「藤原」を称した者が多かった。おそらく「伊達氏」の前身・伊佐氏もそうした動機から「藤原氏」を名乗ったのであろう。

 

 そして、多くの武士たちは自分たちの領地なった場所の名前を名字とした。伊達氏も同様に、伊達郡を領地とし、そこに住んだことから「伊達氏」を称したのである。

 

 その後、南北朝の動乱を契機にして、伊達氏は周辺に勢力を延ばした。室町時代には、8代・伊達宗遠(むねとお)が出羽国長井庄を奪い取り、領主の亘理(わたり)氏を帰属させた。さらに奥州探題である大崎氏から、その領地・柴田と伊具の2郡を奪い取るなど、勢力を伸張させていった。 奥州探題とは室町幕府の地方職制の1つで、奥羽地方(東北地方の青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島など6県)の軍事や民政を司る役割であり、その官職は大崎氏の代々が世襲してきていた。

 

 実は、伊達家には「政宗」が2人いる。周辺に勢力を伸張した8代・宗遠の後を継いだ9代・政宗が「最初の政宗」である。9代政宗は剛勇の将として知られ、関東管領の命令に逆らい続けて領土を延ばし、新たに黒川・名取・宮城・深谷・松山・相馬郡の宇多などを領地とした。

 

 こうして奥州における伊達氏の勢力は、9代・政宗の孫である11代・持宗(もちむね)の時代には、右に出る者がない最強の存在になり、初めて上洛を果たすほどであった。持宗の名前も、当時の足利将軍・義持(よしもち)から1字を賜っての改名であった。以来これが恒例となって13代・尚宗(ひさむね)から16代・輝宗(てるむね)に至るまで伊達家の当主は、将軍の名前の1字を貰うようになっていた。

 

 この間に、14代・稙宗(たねむね/将軍・義稙から1字を拝領)は、朝廷から右京大夫に任じられ、さらに前例のない陸奥国守護職に補任されたのだった。さらに15代・晴宗は大崎氏が世襲してきた「奥羽探題」という官職も得たのである。そして16代・輝宗が、最上義光の妹・義姫を娶って永禄10年(1567)に生まれたのが、17代・政宗(幼名・梵天丸)である。

 

 梵天丸誕生の前後には、織田信長が足利将軍として15代・義昭を奉じて入京し、天下人のように振る舞い始めている。つまり奥羽地方から遠い中央から関東、四国・九州までが天下統一の時代に突入していた。そして、梵天丸の元服に当たって父・輝宗が「9代目当主・政宗殿と同じ名前・政宗を名乗るように」と「政宗」の名を与えた。「9代目様こそ文武の英才を持ち、伊達家中興の祖と湛えられるご先祖である」という。歴史上、最もよく知られる「伊達政宗」の誕生であった。

 

 その後、政宗は奥羽統一を果たしながら豊臣秀吉の軍門に下る形となり、さらに関ヶ原合戦後は徳川家康の大名の1人となり、その所領は60万石。とはいえ、徳川幕府にとっては最も恐るべき大名であり、政宗自体も死ぬまで「天下」を窺う気持を持ち続けたという。政宗は寛永13年(1636)5月24日、死亡。

 

 

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過去記事

江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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