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隠部を刺激する技「指人形」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語86


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■指人形

 

 男が指で女の陰部を刺激する性技。動詞としては「くじる」という。

 

 図では、男女は口吸いをしているが、男の手は女の股にのび、指人形(ゆびにんぎょう)をしている。

 

【図】口吸いをしながら指人形。『婦男愛添寐』(岳亭春信、国際日本文化研究センター蔵)

(用例)

 

①春本『会本妃多智男比』(喜多川歌麿、寛政七年)

 

 お通は家族と芝居見物をしていた。後ろにいる、隣家の息子が手をのばし、

 

 尻を息子へすりつけ、すりつけ、よがるゆえ、ここを大事と指人形、思いれに使えば、お通はみなが狂言に見とれているをさいわい、

 

 

②春本『帆柱丸』(喜多川歌麿、享和元年)

 

 お多勢は幼いころから武家屋敷で奥女中をしていたので、性経験は少ない。そんなお多勢が、男と出会った。

 

 今年、二十七まで指人形と張形にて虫を養い、生(いき)ものは久しぶり。

「さても、さても、このように、よいものか、ああ、うう」

 

「虫を養い」は、欲求不満を鎮めたこと。

「生もの」は、陰茎のことで、第60回参照。

 やはり、指人形より陰茎の方がよいようだ。

 

 

③春本『万福和合神』(葛飾北斎、文政四年)

 

 おさねという娘は、自慰で気がいくのを覚えた。

 

 それより、おさねは気のゆくということを覚えてより、毎夜毎夜、二親の夜なべを見ては、気の悪くなるにつけ、指人形にて間を合わせしが、

 

「夜なべ」はセックスのこと。両親が毎晩、セックスするのをのぞき見たのである。

「気の悪くなる」は、性的に興奮すること。第5回参照。

 

 

④春本『春情指人形』(渓斎英泉、天保九年頃)

 

 指人形は男の最大の楽しみであり、

 

 およそ玉門をもてあそぶほど、こころよきものはあらず。これをくじると言い、品よく言えば指人形を使うと言い、卑しく言えば、鰓(えら)を抜くとも言う。

 

「くじる」は、第27回参照。

「鰓を抜く」は、魚屋などから始まった隠語であろう。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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