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「子になる(こになる)」オルガスムスを味わう【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語85


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■子になる(こになる)

 

 性的な絶頂感のこと。男と女がオルガスムスを味わうと、それが凝縮して妊娠すると考えられていた。

 

 とくに子供が欲しいと願う夫婦にとって、ともに快感の絶頂を味わうのは妊娠への道だった。

絶頂を味わう妻。『古今色角力』(宝暦三年頃/国際日本文化研究センター蔵)

(用例)

 

①春本『肉蒲団』(石川豊信カ)

 

 夫婦がともに快感を味わっている。

 

夫「このように、ようては、子になろう」

妻「わたしも、よい」

 

 

②『にし河筆姿』(不明)

 

夫「このよさは、子になろう。どうも言えぬ」

妻「ややを産むのは怖いが、このうれしさは、あれ、あれ、二度までよござんす」

 

 夫婦のあいだにはまだ子供はないようだ。

 

 

③春本『風流妹背川』(川島信清、享保三年頃)

 

男「このよさは、たしかに、子になろう」

女「枕がはずるる。また気が、ああ、よい」

 

 女は頭が枕から落ちるほど、取り乱している。

 

 

④春本『三の里』(川島信清)

 

 夫は妻のよがりようを見て、

 

 夫「今日は、きついよがりようじゃ。おっつけ子宝をあたえるぞ。中で締めるは上開(じょうかい)の印。舌も吸いきってやろ」

 妻「気を早うやってくだんすな。堪能さしてからじゃぞえ」

 

 上開は名器のこと。第13回参照。

 

 妻は夫に、まだ射精するなと注文を付けている。

 

 

⑤春本『古今色角力』(宝暦三年頃)

 

妻「まそっと、上の方を突いて」

夫「このよさでは、子になろう」

 

図は、妻が快感に陶酔している様子である。

 

 

 

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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