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【ランキング】日本の歴史書・歴史物語で「読んでみたい」のは?


日本の歴史を知るための手がかりとなる歴史書や歴史の物語。今回のアンケートは、「日本の歴史書や歴史物語で、『優れている』『面白い』『読んでみたい』と思う書物」について集計。388票の投票から、第5位から第1位までを発表します。 <総票:388票  男性:女性=8:2>


天照大御神に関わる神社は全国に数カ所あるが、写真の銅像のある宮崎県日向市の大御神社もその一つ。

 

第5位 「大日本史」 投票数:36票 

 

 第5位は36票を獲得した「大日本史(だいにほんし)」。水戸の第2藩主・徳川光圀(とくがわ・みつくに)が、明暦3年(1657)に着手して編纂した日本の通史です。明治維新後も水戸徳川家が事業を継続し、明治39年(1906)に完成。計402巻(目録5巻を含む)からなる膨大な歴史書です。

 

 「紀伝体」と呼ばれる形態による歴史書で、歴代の天皇についての出来事の「本紀(ほんぎ)」、群臣などに関連した「列伝」、天文・地理・制度などの「志(し)」、年表・官職などを記した「表」で編まれています。客観的な事実をありのままに記述することを旨とし、綿密な資料調査を行なっています。

 

 水戸藩の財政の3分の1が費やされたともされており、中心人物だった安積澹泊(あさか・たんぱく)が没した後は、ほぼ半世紀近く有名無実化。頓挫しかけていましたが、立原翠軒(たちはら・すいけん)や栗田寛(くりた・ひろし)らの尽力を経て、開始から249年を経て完成しました。

 

 同書に票を投じた人からは、「水戸藩の財政を傾けてまでも、完成させようとした江戸時代の人々の熱量に圧倒されます」「水戸藩が200年以上をかけて編纂した内容をぜひ、読んで見たいです」「水戸黄門の名で知られる光圀のDNAを感じたい」などの声が寄せられました。

 

 

第4位 「平家物語」 投票数:51

 

 第4位は、「大日本史」より15票多い51票を獲得した「平家物語(へいけものがたり)」。鎌倉時代の軍記物で、作者不詳、成立過程についても諸説あるようです。歴史的な戦をテーマにした「軍記物語」。4つの代表的な物語があり、源平合戦を描いた「平家物語」、保元の乱を扱った「保元物語」、平治の乱を題材とする「平治物語」、承久の乱の「承久記」は、「四部合戦状(しぶかっせんじょう)」と称されます。

 

 「平家物語」はもともと、中世から近世にかけて、全国を旅していた琵琶法師たちによって語り継がれていました。日本各地を舞台とした平家一門のさまざまなエピソード、妖怪を退治した冒険譚が壮大な物語としてまとめられています。

 

 第1巻冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす……」は、あまりに有名でしょう。平家の栄華と没落、そして武士階級の台頭が描かれ、文学としての評価も高く、読む人に「あはれ」を感じさせます。

 

 この物語を読みたいとする人たちからも、「文章が美しく、また表現されている内容にも心を動かされます。漂う無常感がたまりません」「日本人の『あはれ』の美学が凝縮されていると思います。日本文学史に置いても輝いています」などのコメントが数多く集まっています。

 

 また「歴史というよりは文学。高校のとき、古典の教科書で学んだことが思い出されます。10代では今ひとつピンと来ていませんでしたが、年を経て、栄枯盛衰の物語をしみじみ感じられるようになりました。じっくり読んでみたいです」などといいう意見もあり、中高年の人たちには特に人気が高かったようです。

 

 

第3位 「信長公記」 投票数:54 票 

 

  第3位は、4位の「平家物語」にわずか3票差で選ばれた「信長公記(しんちょうこうき)」。戦国時代を代表する武将・織田信長(おだ・のぶなが)の一代記で、戦国から安土桃山時代にかけての史料です。著者は信長の忠臣・太田牛一(おおた・ぎゅういち)。信長以外の武将、豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし)や秀次、秀頼、さらに徳川家康(とくがわ・いえやす)の軍記や伝記も著述しています。

 

 信長の幼少時代から、足利義昭を奉じて上洛するまでを描いた首巻、その後の、永禄11年(1568)から本能寺の変に至る天正10年(1582)までは1年1巻で、全16巻にまとめられています。織田家の様子や尾張・美濃の政情、そして信長の経歴や事績が記述されており、信長やその家臣たちについての史料としてよく使われます。

 

 同書に関心のある人の多くは、やはりカリスマ武将・信長のことを知りたい人たちのようです。「信長が大好き。一度は読んでおかなくてはと考えています」「信長と同時代を生きた人物が著した、信長を知るための貴重な史料。信憑性も高いと思われます」「家臣の視点で、信長が当時、どんな風に見られていたかにも興味があります」など、信長ファンの声が多く集まりました。

 

 

第2位 「日本書紀 投票数:58 

 

 第2位に選ばれたのは、奈良時代、養老4年(720)に成立した「日本書紀(にほんしょき」。日本における初めての正史です。天地開闢(かいびゃく)といわれる世界の始まりや、日本という国が築かれた神代から第41代天皇の持統天皇の時代までの記録とされています。

 

 編纂を命じたのは第40代の天武(てんむ)天皇で、責任者は天武天皇の第3皇子・舎人親王(とねり・しんのう)。国内外のさまざまな歴史書を参考にしながら漢文でまとめられており、中国を始めとする諸外国に日本をアピールするために漢文が使われています。

 

 男性の神様である「伊弉諾神(いざなぎのかみ)」(通称・イザナギ)と、女性の神様の「伊邪那美神(いざなみのかみ)」(通称・イザナミ)が地上に降りて来て、国造りを行う神話といえば、多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

 歴史好きの人たちからは、「古代の歴史を知るための貴重な書」というコメントが多く寄せられ、「登場する神々の物語は、極めて示唆に富んでいるように思う。神社を巡り、改めて日本の歴史に思いを馳せたい」などと関心の高さが伺えます。

 

 

 

第1位 「古事記」 投票数:60 

 

 そして2票差で第1位となったのは、「古事記(こじき)」で60票を獲得。2位の「日本書紀」と同時代に編纂された、現存する日本最古の書物で、日本古代史の基本的な文献史料です。

 

 正しいことを後世に伝えたいと、天武(てんむ)天皇が稗田阿礼(ひえだのあれ)に記録を誦習(しょうしゅう)させたことに始まります。天武天皇の死で一時中断しますが、元明(げんめい)天皇が太安麻侶(おおの・やすまろ)に編纂を命じ、和銅5年(712)に完成に至りました。

 

 「古事記」は序文と上・中・下3巻から成り、登場する神々や人々の物語は、実にドラマチック。天地の始まりや神々の出現、神武(じんむ)天皇から応神(おうじん)天皇までの英雄伝説、さらに仁徳(にんとく)天皇から推古(すいこ)天皇に至るまでの天皇家皇位継承の様子が描かれています。天照大御神(あまてらすおおみかみ)や大国主神(おおくにぬしのかみ)が登場する地上支配や国譲りの物語は、多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

 仮名が混じった変体漢文で書かれており、東アジアなどの対外を意識した「日本書紀」に対して、国内の読者向けだったといわれています。「日本書紀」と「古事記」の成立はわずか8年ほどの違いですが、登場する神の名前や国生みの物語などには違いがあります。

 

 「神話の物語がとても魅力的。小さい頃から何かしら馴染みがある話が多くあります」「歴史物語のなかでも、『古事記』と『日本書紀』ははずせないと思います。じっくり読んでみたい」「神話ではあるが、日本の歴史を知る上で極めて重要だと思う」など様々な意見が寄せられました。

 

 

 

(アンケート…メールとハガキで集計。総票数:388票)

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