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天下人・イエヤスくんが「旧統一教会問題」を斬る!─戦国三大天下人が現代に転生⁉─

三大天下人が“今”を斬る【第五回】


ノブナガくん、ヒデヨシくん、イエヤスくん。かつて戦国乱世を制覇し、天下人となった3人の戦国武将が“現代に蘇り、時勢について語ったら”……。はたしてどんなことを語るのだろうか? 今回はイエヤスくんに「旧統一教会問題」について語ってもらった。


 

信仰で結ばれた絆の固さは絶大

 

 

お歴 司会の“お歴”です。三大天下人が現世に舞い降りて、現代のニュースを語らい、率直な意見を披露する『3大天下人くんが今を斬る!』。今回はイエヤス様に「旧統一教会問題」について語ってもらいます。20227月に自民党との関係が報道されて以降、国内の話題はほとんどこのテーマで持ち切りになっています。

 

イエヤスくん 旧統一教会というのは、1992年に人気だった歌手や元体操選手が参加した合同結婚式で一躍有名になった教団じゃな。

 

お歴 合同結婚式もそうですが、法外な値段で壺を売りつけるなどした「霊感商法」も注目されました。

 

イエヤスくん 現代はさまざまな商いが営まれていると聞いておるが、なかなか珍妙な商いがあったものよ。

 

お歴 これは正規の商売ではないのです。例えば、「堕胎した子どもや、先立たれた夫が成仏できずに苦しんでいる」→「成仏させないと、今の子どもや新しい夫に不幸な出来事が訪れる」→「そのためには全財産を投げ出さなくてはならない」→「不幸を招かないためにこの壺を買いなさい」という理屈で、信者に多額の金銭を出させていたようです。

 

お歴

 

イエヤスくん 悪徳なのかどうかは置いといて、わしもかつては『三河一向一揆』でさんざん苦しめられたから、信仰心で固く結ばれた信者どもの結束は侮れぬもの、と心得ておる。

 

お歴 イエヤス様の時代にも、宗教が起こした混乱があったわけですね。

 

イエヤスくん 『三河一向一揆』との戦いは、現代ではわしの三大危機のひとつとして流布していると聞き及んでおる。領内で家臣が二分して戦うことになった、壮絶な出来事じゃった。一向宗を率いていた本願寺の坊主どもとの戦いも多くの血が流れ、かの織田信長公も苦労された。このような悲劇が繰り返されぬよう徹底して弾圧すべき、と考えておった。

 

お歴 イエヤス様は人々から信仰の自由を奪ったのですか?

 

イエヤスくん いや、戦国武将というのは、仏教寺院に寄進することで神仏の加護を得られると信じておった。かく言うわしも軍神としての摩利支天(まりしてん)を信仰しておったし、松平を名乗っていた時代から先祖代々、徳川家は浄土宗を信仰した。さらに言えば、わしは死後、日光東照宮で東照大権現という神号を得て神になった。つまり、宗教そのものを否定しているわけではない。

 

イエヤスくん

 

お歴 では、何を弾圧したのですか?

 

イエヤスくん 当時は坊主どもが神仏の名のもとにやりたい放題をしておった。中立を保ってさえいればよかったが、特定の勢力に肩入れをして、合戦を左右することもあった。信長公の『比叡山延暦寺焼き討ち』などは、そうした坊主どもに灸を据えてやったものと見ておる。今様に言えば、武装解除を要求したのよ。信長公は、こちらの領分に踏み込んでくることがなければ自由にしてよいとさえ思われていた。基本的にわしも同じじゃ

 

お歴 しかし、歴史的に見てみると、イエヤス様は将軍となられてからキリスト教を禁じています。

 

イエヤスくん 旧統一教会も耶蘇教(キリスト教)の一派だったな。そもそも耶蘇教は、フランシスコ・ザビエルなる宣教師が天文18年(1549)に我が国にもたらしたもの、とされておる。わしは、彼奴らの究極の狙いは、わが国の植民地化であったと睨んでおる。※諸説あり

 

お歴 なるほど。そういえば、当時日本に来ていた司教がイエズス会に送った書簡に「全日本の支配者である内府様(家康)は、キリスト教を好まない。内府を始め、異教徒の大名たちは、太閤と同様に、ルソンやメキシコのスペイン人は、他国を侵略するものだと固く信じている」と書いてありましたね。

 

イエヤスくん 信長公は耶蘇教を庇護した。彼奴らがそれまでにないまったく新しい科学や思想を持ち込んだからじゃ。あの方はそういったものに深い関心があったからのぉ。しかし、信長公の権力を受け継いだ豊臣秀吉公は禁じておる。当時、『現世利益』を強調した教義は窮乏に喘いでいた民に人気があり、続々と入信しておった。それをいいことに、民を奴隷として母国へ連れ帰ろうとした輩がおったので、秀吉公は激怒して禁じたのだ。

 

お歴 イエヤス様も同様の理由でキリスト教を禁じたのですね?

 

イエヤスくん わしは貿易で国を富ますことを考え、多少なら布教もよかろうと思っておった。

 

お歴 寛大ですね。

 

イエヤスくん ところが、彼奴らにとって布教と貿易はひと揃えであった。貿易取引の主な品物は、鉄砲の弾薬や、火薬の原料。当時、我が国では鉄砲は生産できたものの、弾薬は輸入に頼らざるを得なかったものでな。

 

お歴 それと禁教に何の関係があるのですか?

 

イエヤスくん 当時のわしは諸大名の武力を削ぎ落とそうとしておった。ちょうど信長公が比叡山を焼き討ちにして僧侶から武力を奪い取ったように、少しずつ大名の力を落としていくためじゃ。そのため、布教を禁じると同時に各藩に海外との貿易を禁じたのだ。

 

イエヤスくん

 

お歴 なるほど。それがつまり、『鎖国政策』になるわけですね。

 

イエヤスくん 現代ではそのように呼ばれておるらしいが、わしは国を閉ざした覚えはない。布教を主たる目的とせず、貿易の方をさかんにしたいと言うておった阿蘭陀(オランダ)とは貿易を続けておるしの。当然、貿易のうまみは幕府が独占することにしたがな。

 

お歴 話を元に戻します。旧統一教会問題に揺れた2022年下半期ですが、イエヤス様は政治と宗教が結びつくことについて、どのようにお考えですか?

 

イエヤスくん 現代の民(日本人)は、それほど信仰を大切にしているとは思わぬ。しかし、民主主義とやらを重んじている世であるのだから、たとえ少しであっても、信仰によって政治の方向が左右されることがあってはならぬ。政治と宗教とは切り離すべきじゃ。

 

お歴 現代に生きる私たちと同じ感覚ですね。

 

イエヤスくん とはいえ、今、『解散命令』の請求について議論が及んでいるが、ここで言う『解散』は宗教法人格の剥奪と聞いておる。解散しても任意団体としては継続することを、どこまで理解して人々が声をあげておるのかのう。

 

お歴 確かに、仮に宗教法人として解散したところで、教団にそれほどダメージはなさそうと見る研究者もいるようです。

 

イエヤスくん 2世信者の訴えにより議論が加速しておるようじゃが、果たして解散となった時に、信者たちがどうなるかの想像もまったくなさそうじゃ。

 

お歴 現在は、「あんなヤバい教団は解散させるべき!」という空気が先行して、その後のことはあまり考えられていないように見えます。

 

イエヤスくん いつの時代も、信仰で心の均衡を保っている者はおる。何かにすがることで幸福感を得た体験があれば、なおさらじゃ。2世信者たちの苦しみももっとも。教団の活動が解散後もそのまま継続することが見込まれる以上、信者たちのその後も注視する必要がある。考えすぎといわれればそれまでじゃが、あまり追い詰めすぎると、やがて一部の信者が思いもよらぬ行動に出ることもあるかもしれん。

 

お歴 孫子の兵法ですね。「囲師には必ず闕く」。

 

お歴

 

イエヤスくん その通り。包囲した敵軍に逃げ道を作っておくという兵法じゃ。窮地に追い込まれた敵軍は何をしでかすか分からぬ。完全に追い込むのは得策ではない。ほとんど宗教を意識したこともないお主らでは、信仰で結ばれた絆の固さは想像もできまい。慎重には慎重を期すことが肝要というのがわしからの助言じゃ。

 

お歴 分かりました。ありがとうございました!

 

※この記事はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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