江戸時代の人々が受け継いだ雅やかな王朝文化~彦根城博物館 テーマ展「源氏物語―古典の継承と展開―」
編集部注目の歴史イベント
彦根城博物館では2022年9月8日(木)~10月5日(水)の間、テーマ展「源氏物語―古典の継承と展開―」を開催。本展では、江戸時代を中心に、源氏物語の享受の様子を典籍や美術工芸品を通じて紹介している。
■江戸時代の人々が受け継ぎ、展開した、雅やかな王朝文化の世界
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源氏物語(承応三年版絵入源氏物語) 60冊 各 縦28.0cm 横20.0cm 江戸時代 承応3年(1654)刊
物語文学の最高峰と位置づけられる源氏物語。平安時代の成立時から好評を得て書写され、文学のみならず、美術、芸能、果ては和菓子の世界に至るまで、日本文化全般にわたり多大なる影響を与え続けてきた。
注釈研究も早く平安時代末に始まり、考証的なものから鑑賞的方向を打ち出すもの、啓蒙的なものまで、現代に至るまで膨大な蓄積が成されている。

湖月抄 60冊 北村季吟(きたむらきぎん)著 各 縦27.5cm 横19.5cm 江戸時代 延宝3年(1675)刊(延宝元年成立)
源氏物語の受容層は、それまではほぼ一部上層階級に限られていたのが、江戸時代には、版本が出版されたこともあり、大きな広がりをみせ、大衆化することとなる。特に、延宝元年(1673)に刊行された北村季吟(きたむらきぎん)著「湖月抄(こげつしょう)」は、全文を記して頭注や傍注で解説する読みやすい体裁で、源氏物語を広く流布させた立役者として知られている。そして、寛政11年(1799)に刊行された本居宣長(もとおりのりなが)著「源氏物語玉小櫛(たまのおぐし)」は、物語の本質を「もののあはれ」とする論を示し、後世にも大きな影響を与えた。
物語の絵画化 「源氏絵の誕生」

源氏物語図屏風 左隻 江戸時代 個人蔵

源氏物語図屏風 右隻 江戸時代 個人蔵
物語の絵画化もまた、原典成立後あまり間をおかずに始められたと考えられている。室町時代には物語各帖から選択する場面がほぼ定着し、受け継がれていった。江戸時代には、源氏物語に限らず、平安時代の王朝風俗で描いた物語絵全般を「源氏絵」と称するようになり、その活況ぶりがよく分かる。
源氏物語に関する言葉として、源氏絵のほかに、源氏絵によく見られることから名付けられた源氏雲、源氏物語の冊子を収める源氏箪笥、御所車を図案化した源氏車、香りを当てる組香(くみこう)で源氏物語の各帖の名をつけた源氏香などがある。これらもまた、源氏物語の世界が広がり、定着したことのあらわれとも捉えられている。
本展では、江戸時代のものを中心に、源氏物語の享受の様子を典籍や美術工芸品を通じて紹介している。
【開催概要】
彦根城博物館
テーマ展「源氏物語―古典の継承と展開―」
[会期]2022年9月8日(木)~10月5日(水)
[開館時間]午前8時30分~午後5時
※入館は午後4時30分まで
[休館日]会期中無休
[入場料]一般500円、小中学生250円(税込み)
[会場]彦根城博物館
〒522-0061 滋賀県彦根市金亀町1番1号主催:彦根城博物館
【問い合わせ先】
TEL:0749-22-6100
FAX :0749-22-6520