絵師・歌川国芳の優れた作品が並ぶ国立歴史民俗博物館『「もの」からみる近世 「水滸伝ブームの広がり」』
編集部注目の歴史イベント
国立歴史民俗博物館にて、2022年8月3日(水)~9月4日(日)総合展示 第3展示室 特集展示「もの」からみる近世 『水滸伝ブームの広がり』が開催される。歌川国芳の出世作で、浮世絵の武者絵の有名シリーズ「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)(つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり)」から、出来栄えの優れた作を展示。力強く、躍動感あふれる描写が楽しめる。『水滸伝』のブームが、出版のみならず江戸末期の大衆文化のさまざまな分野に波及したことを視覚的に知ることができる。
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歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」より「浪裡白跳張順」 文政(1818~30)末~天保(1830~44)初期 国立歴史民俗博物館蔵
中国の小説『水滸伝』は江戸初期に伝来し、漢学者たちの間で関心を持たれていたが、岡島冠山(おかじまかんざん)による翻訳『通俗忠義水滸伝』(宝暦7~寛政2年・1757~90)の刊行や、より読みやすい挿絵入りの読本や草双紙化したものが出版されるなどして、次第に読者層を拡大していく。舞台設定を日本に変えた山東京伝(さんとうきょうでん)の『忠臣水滸伝』、曲亭馬琴(きょくていばきん)の『傾城水滸伝』や『南総里見八犬伝』なども生み出された。こうした大衆的レベルでの水滸伝ブームは浮世絵の世界にも波及し、文政(1818~30)末期に出た歌川国芳の錦絵シリーズ「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)(つうぞくすいこでんごうけつひゃくはちにんのひとり)」は武者絵というジャンルの流行に大きな役割を果たす。
また『水滸伝』は、そのほかにも狂歌や見世物などさまざまな分野で題材とされただけでなく、そのイメージは、江戸末期の侠客や博徒を描く講談や浮世絵に重ねられていく。このように『水滸伝』は江戸末期の大衆文化をかたちづくる豊かな土壌となったのだ。
本展では、冠山訳『通俗忠義水滸伝』の他、『水滸伝』を扱った葛飾北斎ら浮世絵師たちの版本、あるいは『水滸伝』の豪傑たちを描く国芳らの錦絵、幕末の侠客物(きょうかくもの)への波及作などを展示して、江戸時代末期の大衆文化における水滸伝ブームの広がりを垣間見ていく。
【開催概要】『水滸伝ブームの広がり』
<開催期間>
2022年8月3日(水)~ 2022年9月4日(日)
<会場>国立歴史民俗博物館 第3展示室 特集展示室
<料金>
一般600円/大学生250円
高校生以下無料※総合展示もあわせてご覧になれます。
※障がい者手帳等保持者は手帳等の提示により、介助者と共に入館無料です。
※高校生及び大学生の方は、学生証等を提示してください。
※博物館の半券の提示で、当日に限りくらしの植物苑にご入場できます。また、植物苑の半券の提示で、当日に限り博物館の入館料が割引になります。
<開館時間>
9:30~17:00(入館は16:30まで)
<休館日>
月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)
※8月15日(月)は開館
<主催>
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館