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北条政子 ~ もうひとりの「鎌倉殿」“ 尼将軍 ” と呼ばれた頼朝の妻 ~

『鎌倉殿の13人』主要人物列伝 第4回


この時代、これほどの政治力をもった女性は他に存在したのだろうか? 亡命していた敗者の嫡男を、源氏の棟梁に。弱小だった実家を、有力御家人の一家に。さらに樹立したばかりの脆弱だった幕府を本格的な武家政権に変貌させた──。尼将軍こと北条政子(ほうじょうまさこ)の真実に迫る。


 

北条時政の娘、義時の姉として伊豆の弱小武士団でしかなかった北条家の勢力拡大に尽力する。源頼朝の死後、幕府の政権運営や御家人の統制などでその存在感が増していった。イラスト/宇野市之丞

 鎌倉初代将軍・源頼朝の正妻である政子は、北条時政を父として保元2年(1157)に伊豆で生まれた。頼朝とは、10歳違いの夫婦である。政子は、頼朝没後に起きた様々な事件・乱・出来事に応じて自ら主導して収拾に動いた。このため、女性でありながら将軍のような権威と力を発揮した政子を、周辺は「尼将軍」と呼んだほどの実力者であった。 

 

 平治の乱(1159)の後に頼朝が伊豆に配流(はいる)された際に、その監視役であった時政の娘として頼朝と出会った。父親の反対を押し切って2人は駆け落ちし、治承2年(1178)には長女・大姫(おおひめ)が誕生した。

 

 全国的に平氏政権への反発の機運が盛り上がった治承4年8月に頼朝が挙兵すると、この時には平氏方であったはずの時政らも頼朝に味方した。この10月には、関東地域をほぼ掌中に収めた頼朝の御台所(みだいどころ)として迎えられた政子は、長男・頼家(よりいえ)、二女・三幡(さんまん)、二男・実朝(さねとも)を相次いで出産した。頼朝にとって、家庭内ばかりでなく、政治的にも良き伴侶としての活動を見せた。

 

 正治元年(1199)正月に、頼朝が急死する。政子は出家して尼となった。その後、頼家が2代将軍に就任するとこれを後見し、その政権を支えるために(一方では若い頼家の専制政治を防ぐ目的もあって)宿老など13人による合議制も成立させた。そして父・時政、弟・義時と組んで幕府内における「北条氏の地位向上・実権掌握」に腐心する。

 

 この結果、実子・頼家との関係がギクシャクしてくる。内訌(ないこう)があって、頼家とその舅(しゅうと)家である比企能員(ひきよしかず)一族を滅ぼした。二男・実朝が3代将軍に就任すると、政子は再び後見として幕府の政治に参加した。

 

 この後も内訌は続き、父・時政とも対立。弟・義時と結んで、時政を伊豆に幽閉した。この頃、後鳥羽上皇ら京都の朝廷には「倒幕(鎌倉幕府を討つ)」気運が高まってきた。政子は、朝廷との和解工作のために上洛した。だが、承久元年(1219)正月、鶴岡八幡宮で将軍・実朝が頼家の遺児・公暁(くぎょう)によって暗殺されてしまう。この暗殺には、多くの謎があり、実行犯の他に主犯がいたと思われるが、謎のまま終わる。

 

 実朝には後継者がいなかったので、政子は頼朝の遠縁に当たる左大臣・九条道家の4男でまだ2歳の頼経(よりつね)を将軍として迎えた。政子は、幼いこの将軍の後見として御簾(みす)の内で政務を見た。こうした状況から、政子は「尼将軍」と呼ばれるようになった。

 

 承久3年(1221)後鳥羽院は諸国に「北条義時追討」の宣旨を下し、討幕運動を煽った。鎌倉幕府創設以来最大の危機である。この時、政子は「鎌倉殿・頼朝の正妻」として御家人を前に頼朝の恩義を説き決起を促した。結果として、政子がこの「承久の乱」を勝利に導いた。この後も北条氏の執権体制に腐心した政子は、嘉禄元年(1225)7月11日、病没する。69歳であった。  

 

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江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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