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仏様の周りを囲んでいる「八部衆」とは何者?

今月の歴史人 Part3


仏像を目にするとき、その周りに四天王とともに、またはそれのみで立っている仏像があることを目にする。八部衆と呼ばれる釈迦をお守りするために立っている像である。今回は「八部衆」について詳しく語っていきたい。


 

凶暴な阿修羅ら八部衆は教化され釈迦の眷属に

阿修羅/戦いの神であったが、仏教に帰依した。八部衆の中、鎧で武装していない。上半身は裸でサンダルを履く。

 仏法を守るため、釈迦の眷属になったものが八部衆である。 十大弟子とともに釈迦のまわりで説法を聴き、釈迦の涅槃の時にも登場して、釈迦を守る。天竜八部衆ともいい、天、龍、夜叉、乾闥婆、阿羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅迦の八神である。興福寺の乾漆造八部衆像は、五部浄を天に、沙羯羅を龍に鳩槃茶を夜叉に、畢婆迦羅を龍か摩 睺羅に相当させている。

迦楼羅/インド神話の金翅鳥。人身鳥頭、あるいは鳥 の形で表される。とさかや大きなくちばしがあり、くちばしの左右に肉垂を表わす。


乾闥婆/釈天に仕える天上の音楽神(ガンダルヴァ)。 興福寺像の場合、獅子冠をいただき、目を強く閉じる。洲浜座に立つ。


沙羯羅/頭に蛇をのせ、蛇を竜と見て八部衆の龍とみる。 頭を上げて、頭を一巻きして左肩から尾を垂らしている。緊那羅と同様音楽を司る。

 興福寺八部衆像は顔形もそれぞれで、特徴的である。獅子の冠を いただく乾闥婆は、帝釈天に仕えて 音楽を奏でる半神族としてインドの 神話によく登場する。沙羯羅は、頭に蛇を載せ、首から肩に巻きつけて いる。頭は鳥、体は人間という迦楼羅は、インド神話に登場するガルー ダを前身とする。

緊那羅/体の半分が人、半分が獣の半身半獣である。 財宝神毘沙門天に仕えている。頭に角が生えているのが特徴で、額の真ん中に目がある。


五部浄/象頭冠をいただく。象の口の中から現れてきたようだが、眉根を寄せてじっと前を見つめる。八部衆の天に相当。


畢婆迦羅/顎髭を蓄えるのが特徴。龍あるいは摩睺羅迦に相当するはずだが、どちらも決め手がない。 興福寺八部衆の中では大人びている。


鳩槃荼/夜叉に相当。髪の毛を逆立て、目をつり上げ、 口を開けて歯を見せる、強い怒りの表情をつくる。夜叉のように恐ろしげな顔つき。

 緊那羅は半人半獣。頭に角が生えているのが特徴であり、五部浄は象の冠をいただく。あごひげを蓄えて いるのが特徴の摩喉羅迦は少年らしい風貌の多い興福寺八部衆像の中では大人びている。人を食う鬼である夜叉に相当する鳩槃茶、戦闘を繰り返す運命にある阿修羅など、凶暴な神も含まれているが、これらもみな、 釈迦の教えに触れて教化されて以後、 仏教の守護神となったのである。

監修/副島弘道、文/相田真理・花輪恵

『歴史人』11月号「日本の仏像基本のき」より

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