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知っているようで知らない閻魔様の実像に迫る

今月の歴史人 Part1


だれもが知っている仏さまのひとりに「閻魔(えんま)」様がいる。実は閻魔様は元々はインドで生まれたヒンドゥー教の神様のひとりで、歴史を経て仏教の仏様とされている。今回はだれもにおなじみである「閻魔様」の実像に迫る。


 

死の神・十二天の焔摩天が中国で冥土の王・閻魔王に

『閻魔天曼荼羅図』インドのヴェーダでは死者の王でのちに死神と考えられやがて閻魔王に。忿怒の形相で地獄に落ちた亡者の罪状を厳しく裁く姿をしている。(京都国立博物館蔵)

出典:Colbase

 

 焔摩天は南方焔摩天とも呼ばれ、運命、死、冥界を司る。聖典(ヴェーダ)にあらわれるヤマは、恐ろしい死の神と考えられて、中国では冥土の王、閻魔王として登場する。そこでは中国の王侯の装束をまとい王冠をつけ、激しい怒りの忿怒相で表現され、死者を裁く。

 

密教で重視される十二天

『十二天像 閻魔天』 十二天の一尊。古代インド神話のヤマが仏教に取り入れられた。冥界への道を発見して死後の世界で長となり、天上世界の神となった。 (奈良国立博物館蔵)

出典:Colbase

 天はその姿形から、貴紳形、天女形、武将形、鬼神形、力士形、鳥獣形などに分けられる。

 

 貴紳形には、中国風の礼服を着た梵天と帝釈天などがある。天女形には吉祥天、弁才天などがあり、美しい女性の姿で、中国唐代以来の貴婦人の衣装を着ている。

 

 また、八方(東西南北の四方と東北・東南・西北・西南)を護る諸尊を八方天といい、さらに天地、日月を護る諸尊を加えて十二天という。

 

【密教で重視される十二天とは】

帝釈天(インドラ) 右手・独股杵(三股) 白象
東南 火天(アグニ) 遍身火焰四臂 左手・施無畏印, 念珠 右手・仙杖, 水瓶 青牛(青羊) 南焔摩天(ヤマ) 左手(焔摩)幢水牛 西南 羅刹天(ラクシァナ) 右手・剣白獅子
西 水天(ヴァルナ) 左手・蛇索(竜索) 右手・剣亀
西北 風天(ヴァーユ) 右手・幢幡
毘沙門天(ヴァイシュラヴァナ) 右手・棒 左手・宝塔 二鬼
東北 伊舎那天(イシァーナ) 三目忿怒相右手・三股叉(三戟創) 黄豊牛(または黒牛)
梵天(ブラフマン) 四面四臂 左手・股鉾, 水瓶 右手・蓮華
(プリトヴィ) 四臂像あり 雲
日天(スールヤ) 右手・日輪(日珠) 五赤馬
月天(チャンドラ) 左手・月輪(半月杖)

 

 武将形には仏法や仏教世界を守る護法神である四天王、十二神将などがあり、鎧を着け武器を持ち、複数で組みになっていることが多い。

 

 金剛杵を持つ執金剛神は、仏法を守護する武将形だが、のちに二体に分かれて寺門を守護する金剛力士となった。口を開ける「阿形」と、口を閉じる「吽形」の一対である。仁王として親しまれているものは上半身裸形の力士形だが、鎧を着ける武将形の金剛力士もある。そのほか、鬼神形、鳥獣形には八部衆のなかの夜叉、迦楼羅などがある。

 

監修/副島弘道、文/相田真理・花輪恵

『歴史人』11月号「日本の仏像基本のき」より

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