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岡田准一主演『燃えよ剣』原田眞人監督ロングインタビュー 第1回

「土方を演じるために生きてきた」岡田准一と『燃えよ剣』を創るまで

 岡田准一と原田眞人監督が『関ヶ原』に続き司馬遼(遼は二点シンニョウ)太郎原作作品で再びタッグを組む10月15日(金)公開の映画『燃えよ剣』。今回、原田監督のインタビューを全3回に分けて公開。キャストとの信頼関係から、作品へのこだわりまで、たっぷりと語ってもらった。

「燃えよ剣」

『燃えよ剣』10月15日(金)全国ロードショー ©2020「燃えよ剣」製作委員会 配給:東宝=アスミック・エース

――本作は監督がかなり温められていた企画であり、岡田さん自身もとても思い入れのある企画だということで、お二人の中でどのようなお話があったのでしょうか。

 

原田眞人監督(以下、監督)

『関ヶ原』の撮影中に、もともと岡田くんが歴史好きだということもあって、お互いに気が合って、次何やろうかって話になったんですよね。それで「やっぱ『燃えよ剣』だよね」と。もう、ホントに話が早く進んで、彼は持っている雰囲気とか生き様が「土方を演じるために生きてきた」みたいなとこがあるので。

 最初は漠然としたところで、ともに司馬さんの作品である『燃えよ剣』と『新選組血風録』を合体させて膨らませてやりたいという気持ちでいたんですよね。実際に、脚本を書く段階で最初は東宝の方からも前後編の二部構成で、っていうアイデアもあったんで、だったらあれも入れられるこれも入れられるってなったんだけど、最終的には一本になりました。なので『新選組血風録』の要素は盛り込めなくなったんですけど、実際書いてみると新選組がなんで京都へ行ってああいう風になりたかったのか、という部分をはっきりさせるためにはむしろ『新選組血風録』よりも、『王城の護衛者』の容保(松平容保)と会津藩の流れを入れないとこれは分からないな、って発見できました。

原田監督

原田監督

――本作を実現するにあたっての条件は何かあったのでしょうか。

 

監督
 岡田・原田コンビで『燃えよ剣』ならばいけるというのが製作者たちの考えとしてあったので。あとは、僕の方でつけた条件として、作る以上は池田屋事件のシーンはオープンセットにして全部フルスケールで再現したい。そこで、滋賀の彦根にセットを立てることになったんです。そういう意味では理想的に進んでいきましたね。

 

――今回、国宝も含めてなんと60か所ものロケ地を使っていらっしゃるっているとのことですが、印象深い・思い出深い場所がありましたらいくつか教えてください。

 

監督
 いつも京都のスタッフに場所を探してもらうとどうしても自分のテリトリーの中になりがちなんですね(笑)。

 なので、今回は脚本を書いているときに、自分で東京から車を走らせて岡山を回ったんです。とりあえず、岡山にどんなものがあるか調べておいて、その中の1つが吉備津神社。それから吹屋の「ふるさと村」も見ようって。実際そういうところを回ってみると、やっぱり素晴らしいですよね。それで「ふるさと村」に行ったときに、すぐ近くに広兼亭っていう場所があって。『八つ墓村』とかで何回か使われているけれども、個人で行ったので、屋根裏とかそういうとこは見られなかったんですよね。一応、そういうのは全部メモしておいて、あとで制作担当にどれだけ撮影できるか許可を取ってもらいました。

 その段階で岡山の小堀遠州が庭園をデザインした頼久寺などに出会いました。ほんとは四国にも行きたかったんですけども、それは次回の楽しみにとっておこうって(笑)。

 だから、岡山は相当個人で回りました。それがすごくプラスになった。そのなかで、足で回って見つけた岡山県真庭市勝山の旭川って場所があるんですけど、その脇の街並み保存地区に木の橋が当時のまままだ残ってたんですよ。これを活かさない手はないなって。さらにその近くにあばら家があって、立ち方といい佇まいといい、荒れてるし、許可が出たときに好きなように使ってくださいと言ってもらって。それが久坂玄瑞、岡田以蔵と土方が出会う場面。鴨川に見立てられる川とその川の脇にあばら家が建っているロケーションというのは、日本全国探しても2か所とないですよ。あれは凄く嬉しかったですよね。

 

――ロケハンした後のシーンに触発されて脚本も変えるようなことは今回はありましたか。

 

監督
 まさにあばら家がそうだったんですけど。基本的には大体全部ロケハンしてから絵コンテを書くので、絵コンテ書く前の段階で脚本を書いてくことはありますよね。だから池田屋なんかもきっちりしたのがちゃんとできるというのが分かって、それを想定の上、沖田総司が二階に上がって正面の部屋まで行く廊下を一気に横移動で撮りたいんで、隣の家屋も造ってるんですよ。それをあとから壁で塞いでくみたいな。そういう風に変えていける贅沢さというのはありますよね。やっぱりそのロケーションに応じて脚本を書き換えていくというのはボクが基本的にやってきていることなんで。時代劇の場合、特にそういうことをやらないとならないし。

 

(第2回につづく)

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