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名古屋の歴史と文化を 訪ねる旅

現存する名古屋城の3大櫓に迫る! ─400年の時を越え残った日本最大級の遺宝─

名古屋の歴史と文化を 訪ねる旅⑧

■名古屋城の歴史を刻む文化財

◇全域が名勝として指定名勝「二之丸庭園」

 二之丸は、藩主の御殿が建てられていた。その北と東に造られていたのが、広大な二之丸庭園である。この庭園は、池や築山のある回遊(かいゆう)式庭園であり、園内には茶室や四阿(あずまや)が建てられていたほか、神社まで勧請(かんじょう)されている。藩主が暮らす御殿に併設された大名庭園としては、日本最大の規模だった。明治維新後、陸軍により建造物は撤去され、庭園の一部が改変されたが、復元整備が進められている。名古屋城総合事務所提供

 

◇大坂の陣の戦勝を祈願「必勝 榧の木」

 高さ16mもある榧の大木で、尾張(おわり)藩の初代藩主・徳川義直(よしなお)が大坂の陣に出陣する際、戦勝祈願にその実を食したという。そのため、大坂の陣に勝利した吉兆として「必勝榧の木」と呼ばれるようになった。国の天然記念物に指定され、樹齢は600年を超す。徳川家康が築城したときにはすでに存在していたと見られ、那古野(なごや)城の城主であった織田信長(おだのぶなが)も、当然、この榧の木を見ていたに違いないだろう。名古屋城総合事務所提供

 

◇旧陸軍の火薬庫乃木倉庫(国登録有形文化財)

 煉瓦(れんが)造り平屋建ての倉庫で、もともとは明治維新後に陸軍によって建てられた弾薬庫である。日露(にちろ) 戦争後、名古屋に赴任していたこともある乃木希典(のぎまれすけ)将軍にあやかり、乃木倉庫と呼ばれた。太平洋戦争による空襲を避けるため、本丸御殿の障壁画のうち、持ち運びできるものは乃木倉庫に保管。そのため、保管されていた障壁画は焼失を免れた。現在は復元模写が本丸御殿に収められている。名古屋城総合事務所提供

 

■政庁として家康によって建てられた「名古屋城本丸御殿」

名古屋城本丸御殿

本丸御殿玄関/名古屋城総合事務所提供

 本丸御殿は、尾張藩主の居所として徳川家康による築城の際に建てられたものである。しかし、3代将軍・徳川家光(いえみつ)の上洛にあたり、その宿所として改修されたため、将軍の御成御殿(おなりごてん)と位置づけられた。そのため、尾張藩主の御殿は二之丸に移り、尾張藩主といえども、本丸御殿に居住することはなかったのである。もっとも、4代将軍・徳川家綱(いえつな)からは、江戸城で将軍宣下を受けたため、将軍が上洛(じょうらく)のために名古屋城で宿泊することはなかった。いわば、空き家のまま幕末に至るまで管理されていたことになる。

 明治維新後も、貴重な歴史遺産ということで本丸御殿のほとんどは解体を免れ、保存されることになったが、名古屋大空襲で焼失し、平成21年(2009)から平成30年にかけて木造で復元された。なお、殿舎の屋根は、幕末当時にはほとんど瓦葺(かわらぶき)に改められていたが、平成の復元では築城当初と同様である柿葺(こけらぶき)で建造されている。

上洛殿上段之間

上洛殿上段之間/名古屋城総合事務所提供


表書院三之間

表書院三之間/名古屋城総合事務所提供


上洛殿南入側中央欄西面

上洛殿南入側中央欄西面/名古屋城総合事務所提供

■戦災以前は[国宝]であった名古屋城の天守

 天守は、5層5階・地下1階建ての大天守と、2層2階・地下1階建ての小天守から構成される。いわゆる連結式天守の典型であった。敵が天守に攻め寄せてきたとき、小天守を経由しなければ大天守に入ることができないようにしていたのである。

 大天守の屋根には、金の板を貼り付けた鯱(しゃちほこ)が載せられていた。金鯱は江戸城や大坂城にも存在していたとみられるが、江戸時代の前期にそれらの天守は焼失していたため、金鯱が名古屋城の象徴となる。また、天守の高さとしても、江戸城や大坂城よりは低かったものの、幕末まで残っていた天守としては日本一の高さを誇っていた。

 大天守と小天守は、明治維新後も保存され、戦前の国宝保存法に基づき、国宝に指定されている。しかし、昭和20年(1945)の名古屋大空襲で焼夷
弾に大天守が被弾したため焼失してしまう。その後、昭和32年から昭和34年にかけ、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)で外観復元された。近年では、耐震性が低いため、木造による完全復元も検討されているところである。

名古屋城天守

戦災前の名古屋城天守および小天守名古屋城には詳細な実測図など豊富な資料が残されており、より精密な完全復元が可能とされている。名古屋城総合事務所提供

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小和田泰経おわだ やすつね

大河ドラマ『麒麟がくる』では資料提供を担当。主な著書・監修書に『鬼を切る日本の名刀』(エイムック)、『タテ割り日本史〈5〉戦争の日本史』(講談社)、『図解日本の城・城合戦』(西東社)、『天空の城を行く』(平凡社新書)など多数ある。

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