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暴君「董卓」は苦労人なうえに可哀想な人物だった!?  三国志好きほど“沼にハマる”異色マンガ『三国志凶漢伝 暴喰の董卓』著者、特別インタビュー 

ここからはじめる! 三国志入門 第130回

『三国志凶漢伝 暴喰の董卓』より ©新潮社/杉山惇氏

いきなりロウソクのように燃える董卓の姿

 

 三国志を題材とした作品の主人公といえば、劉備や諸葛亮(孔明)、曹操など、おなじみの人物の名前があがる。漫画では『朱のチーリン』の姜維(きょうい)はじめ、司馬懿(しばい)を主人公とした変わりダネの作品もあるが、それらはまだおとなしい方かもしれない。

 

 2025年に連載がはじまった漫画『三国志凶漢伝 暴喰の董卓』(以下、『暴喰の董卓』)は、なんと董卓(とうたく)が主役の作品だ。

 

 『三国志』の時代――後漢末期の暴君として知られる董卓。本連載でも紹介してきたように、彼の横暴ぶりは改めて語る必要もないだろう。それは過去の三国志作品でもほぼ共通する。『天地を喰らう』『蒼天航路』も然り、主人公サイドにとって巨大なボスのように立ちはだかるのが彼の役割である。

 

 しかし、本作では一コマ目から董卓が登場する。が、「董卓の遺体は脂が地に流れ出す程の肥満体。へそに挿した灯心の火は数日間燃えていたという」とのナレーション。そして、そこには火のついた灯芯(とうしん)が挿され、「人間ロウソク」になった主人公の将来の姿が……。なんともシュールなオープニングである。

 

『三国志凶漢伝 暴喰の董卓』第1巻の冒頭。©新潮社/杉山惇氏

 そこから舞台は3年前の洛陽へ。董卓が帝を擁して君臨し始めるところから始まるが、しょせん辺境から来た成り上がり者とみられ、命令に従わず、反乱を起こされるのが彼の悩み。

 

 本作の董卓は気前がよく、繊細さを持った人物。だがその分、ストレスがかかると腹が鳴るという困った体質の持ち主。それを解消するため、ひたすらに喰う。連日暴飲暴食にふけって肥大化し、名実とも暴君になっていく……そんな過程を描く漫画である。

 

 第1話では養子の呂布と親睦を深めるため「馬肉」料理に舌鼓を打ち、第2話では何太后(かたいこう)をもてなす一席をもうける。第3話では娘婿の牛輔(ぎゅうほ)が調達してきた肉で酒宴……と、毎度の宴席で董卓がドカ食い。その料理担当が参謀の李儒(りじゅ)だ。じつは董卓の「悪業」の多くは李儒はじめ、部下が勝手に進めてしまうことが多いのだが、結果的にボス・董卓の責任になる。

 

歴史書の記述がベース。渡邉義浩教授も太鼓判!

 

 こう書くと、ただのグルメ漫画かと思われてしまうかもしれない。ただ上にも記したとおり、牛輔はじめ、親董卓派の文人・蔡邕(さいよう)の活躍、董卓が袁紹(えんしょう)を懐柔しようとする場面など、過去あまり着目されなかった人物や出来事も詳しく描かれる、れっきとした歴史漫画でもある。

 

 『三国志演義』だけでなく、正史『三国志』や『後漢書』など歴史書の記述をもとにアレンジした描写も随所にあり、三国志に詳しい読者も興味深く読めると評判だ。

 

『三国志凶漢伝 暴喰の董卓』第1巻 、董卓と食事を楽しむ呂布だが・・・。©新潮社/杉山惇氏

 本作のもうひとつのウリが、監修に三国志研究の第一人者・渡邉義浩さん(早稲田大学教授・三国志学会事務局長)が関わっている点。連載や単行本で各話ごとに渡邉教授の解説が入り、ストーリーの補足をしてくれる。今回の記事にあたり、渡邉教授から寄せられたコメントを紹介したい。

 

「ストレスを暴食で解消するという発想、董卓の良い点を見つけようとする心意気が面白いです。監修の立場ですが、あまり杉山さんにヒントは出せていません(笑)。参考文献に私が訳した『後漢書』(早稲田文庫)を使ってもらっていたり、官職の上下をチェックしたりなど、本当に細かい部分です。原典では董卓は早くに退場してしまいますが、漫画がなるべく長く続いて、董卓の寿命が延びると良いですね」

 

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上永哲矢うえなが てつや

歴史著述家・紀行作家。神奈川県出身。日本の歴史および「三国志」をはじめとする中国史の記事を多数手がけ、日本全国や中国各地や台湾の現地取材も精力的に行なう。著書に『三国志 その終わりと始まり』(三栄)、『戦国武将を癒やした温泉』(天夢人/山と渓谷社)、共著に『密教の聖地 高野山 その聖地に眠る偉人たち』(三栄)など。

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