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男が処女膜を破る行為「割る(わる)」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語75


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■割る(わる)

 

 女の初体験を、男の側からは「割る」という。破瓜ともいう。

 

 女の側からすれば、「割られる」になる。

 

 図は、男が「それ、どうだ、痛いか。ちっとの間だから、こらえていな」と言いながら、割っているところである。

 

【図】『春色入船日記』(歌川国盛二代、嘉永期)、国際日本文化研究センター蔵

(用例)

①春本『善悪占仕形道成寺』(奥村政信)

 

 味噌小屋の中で男女がセックスをしているのを、娘がのぞき見て、つぶやく。

 

 「うらやましいこと。早く誰ぞに割ってもらいたや」

 

 娘は初体験をしたがっている。

 

 

②春本『魂胆枕』(北尾政美、天明六年頃)

 

   女は処女で、抵抗するのを、男は、

 

 足を踏ん張り、身をもがき、のすりまわりて髪もとけ、畳へ油をこすりつけ、苦しがるにも容赦なく、むごったらしくぶち割りぬ。

 

 強引に破瓜したのである。

 

 

③春本『魂胆枕』(北尾政美、天明六年頃)

 

 巨根を挿入されて、女は痛がり。

 

 「のう、情けない、裂けますわな。十二の春、無理やり割られましたが、その時の痛さ、つらさ、数ならず。産もたびたびいたしたが、外へ生むより内へ生む、この苦しみの耐え難さ」

 

 外へ出す出産より、内へ入れる方が苦しい、と。

 女は十二歳で割られていた。

 

④春本『艶本床の海』(喜多川歌麿、寛政十二年)

 

 商家の奉公人が、主人の娘の処女を奪う。

 

 男「奉公人の身で、ご主人の御新鉢(おんあらばち)を割るというも、私が日ごろ、旦那を大切にいたします心を、天よりあわれみ給いての事でございましょう」

 女「もう、痛くはないから、ぐっと入れてみや」

 

 男は勝手な理屈を述べている。

「新鉢」は処女のこと。第十七回参照。「御」を付けているのがおかしい。

 

⑤春本『閨中膝磨毛』(文化~嘉永年間)

 

 志た八は、女の伯父と言う男から金を要求されるが、

 

 志た八は面目なけれど、かかる上玉の新鉢(あらばち)を割りたるに心うれしく、

 

 じつは、女は処女ではなかったし、いわゆる美人局(つつもたせ)だった。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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