自動迎撃システムと連動した究極の迎撃戦闘機【コンヴェアF-106デルタダート】(アメリカ)
超音速時代の到来~第2世代ジェット戦闘機の登場と発展~【第15回】
第2次世界大戦末期から実用化が推進された第1世代ジェット戦闘機は、朝鮮戦争という実戦を経験して完成の域に達した。そして研究はさらに進められ、亜音速で飛行する第1世代ジェット戦闘機を凌駕する超音速飛行が可能な機体が1950年代末に登場。第2世代ジェット戦闘機と称されて、超音速時代の幕が切って落とされた。前シリーズに続いて本シリーズでは、初期の超音速ジェット戦闘機(第2世代ジェット戦闘機)について俯瞰してゆく。

飛行中のコンヴェアF-106デルタダート。同社の類似の前作であるF-102デルタダガーよりも洗練されたスタイリングが美しい。
コンヴェアはデルタ翼を備えた超音速迎撃戦闘機F102デルタダガーを1953年10月24日に初飛行させた。同機はアメリカ空軍初の量産されたデルタ翼超音速機となったが、試行錯誤の末に誕生した機体で、性能的にも今ひとつであった。
そこでコンヴェアとアメリカ空軍は、F-102の発展型を開発することにした。すでにF-102という先行機種が存在していたので、目指したのは同機での経験を反映させた、より高性能の機体である。
1956年12月26日、F-106の量産初号機が初飛行に成功した。ちなみに本機は、接頭記号「X」や「Y」が付与された試作機を持たず、直接に量産機が生産された。
F-106の最大の特徴は、SEGE(半自動地上管制迎撃システム)と完全に連動し、本機に備えられている自動操縦システムが制御されることで、地上から指示された迎撃目標機に対して、追尾コースまたは見越し接触コースでの自動迎撃が行える点である。
この性能は、定地防空迎撃戦闘機としては理想的であり、アメリカと北米大陸の防空の要ともいうべき機体となった反面、きわめてコストが高くなる要因のひとつともなっている。そのため、さすがのアメリカ空軍も必要なだけの数のF-106を揃えることができず、マクドネルF-101ブードゥーの迎撃機型で本機の不足を補わねばならなかった。
F-106を語るうえで興味深いのは、無誘導の空対空核弾頭ロケット弾AIR-2ジニーの運用機種のひとつであることだ。他にもF-101やノースロップF-89スコーピオンなどもジニーを運用できたが、空中で核爆発を起こし、それに巻き込んで核爆弾を搭載した敵の爆撃機を確実に撃墜するという、東西冷戦初期ならではの「目には目、歯には歯」的な兵器である。
このように、F-106は防空に特化し、しかも高価な機体だったことから、実戦に用いられたことはついぞなかった。
しかし運動性能に優れていたため、異機種間での空戦演習には使用され、F-4ファントムIIやF-15イーグルを相手にして、互角か時にそれ以上に戦えたともいわれる。
なおF-106は当然ながらアメリカ空軍だけしか運用しておらず、1988年に実戦部隊から退役した。