2025年は川本喜八郎 生誕100年/没後15年。三国志や平家物語などの人形が観られる「飯田市川本喜八郎人形美術館」へ行こう!
ここからはじめる! 三国志入門 第123回
■孔明など主役級だけでなく脇役、メカ馬までが見どころ
「三国志」は、おもに魏・蜀・呉および後漢の4つの勢力別に分かれた展示がみられる。やはり多くの来館者のお目当ては冒頭にも載せた劉備主従(蜀)のエリア。一番人気の諸葛亮(孔明)をはじめ、劉備・関羽・張飛・趙雲・馬超、黄忠・龐統などの姿が。第31回常設展では劉禅・法正・魏延・馬謖・馬良・姜維といった、比較的レア(展示回数が少ない)人形も展示中だ。

館内の展示風景(※展示内容は定期的に変わります)
要注目は曹操軍(魏)の武将たちのエリア。夏侯惇・夏侯淵・典韋・許褚などの姿がみられる。程昱・荀彧・司馬懿など軍師の姿もある。陣営の中心に居るのは、やはり曹操。諸葛亮同様、美術館のメインだ。川本自身が曹操ファンで、思い入れがあっただけに素晴らしい。第31回常設展では曹丕・曹植とともに「三曹」を展示中。
孫権軍(呉)の展示も見逃せない。孫権や、その父・孫堅、兄の孫策をはじめ、周瑜・陸遜・魯粛・黄蓋・太史慈・徐盛といった顔ぶれがみられる。人形劇では完全な悪役にされてしまった呂蒙の姿もある。第31回常設展では別コーナー「美女五傑」で、孫夫人・大喬・小喬が、淑玲・貂蝉のふたりと一緒に展示されている。

「平家物語」の展示コーナー
孔明の顔(かしら)は何度も製作し直して完成させたというが、脇役の人形も一体一体、実に細部まで精巧に造られていることに毎度ながら感心する。

軍勢をあらわすために製作された「メカ馬」
また、ときおり展示されるのが「メカ馬」。人間による人形の操作だけでは再現できない「軍勢」の姿を遠くから写すために製作されたもの。人形操演者でもある岡崎明俊氏とその事務所が製作し、当時としては画期的な手法として注目されたという。
館内には衣装を外した状態の人形が置かれていて、そのカラクリを眺めたり、人形の操演体験もできたりする。
美術館スタッフによると、海外の客も含め、年間で約13,000人の方が来場。中には4時間も滞在したファンの方もおられるとのこと。『人形劇 三国志』の放映は1982年。実に40年以上も前に制作された作品と人形が、今もファンを魅了し続けている様子が、ここにいると実感できるのだろう。
館内では「三国志」「平家物語」のほか、川本作の「花折り」「道成寺」「火宅」「鬼」といった人形アニメーション作品で使用された数々の人形作品も見ることができる。エントランスの隣に映像ホールがあり、その人形アニメーション作品が定期的に上映されている。「三国志」「平家物語」以外の作品に触れられる良い機会であるし、短編作品なので休憩も兼ねて鑑賞をおすすめしたい。
川本は2010年に逝去、人形が新たに生まれることはない。しかし、残された人形は、このように色々な角度から紹介され、これからも多くの人を魅了し続けることだろう。

まぼろしの項羽、劉邦人形の展示(過去の展示風景より)
冒頭にもお伝えしたとおり「特別展『項羽と劉邦』展」(9月13日~11月30日)が開催。ファンの間では、まぼろしの人形劇と呼ばれ、滅多に見られない項羽・劉邦・韓信・虞美人などにお目にかかれるチャンスだ。
川本の作品が観られる施設として、もうひとつ東京の渋谷区に「川本喜八郎人形ギャラリー」がある。そちらは『人形歴史スペクタクル 平家物語』の放送で使用された「平家物語」の人形が約百数十体あり、「三国志」人形は放送後につくられた48体を所蔵。現在は両館で人形のトレード展示も行われていて、バリエーション豊かな展示が楽しめる。ぜひ合わせて鑑賞されてみてはいかがだろう。(執筆/上永哲矢)
※写真提供:飯田市川本喜八郎人形美術館
最新・現在の展示テーマは公式サイトにて。
■飯田市川本喜八郎人形美術館
長野県飯田市本町1丁目2番地
休館日・毎週水曜(祝日開館)及び年末年始
https://www.kawamoto-iida.com/
■川本喜八郎人形ギャラリー
東京都渋谷区渋谷2-21-1渋谷ヒカリエ8階
開館時間 11:00 ~ 19:00
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/bunka-shisetsu/bunka-shisetsu/gallery.html
■川本喜八郎 Official WEB SITE(川本プロダクション)
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