縄文人たちは昆虫を食べていた⁉ 縄文土器からゴキブリやカミキリムシの痕跡がでてきた⁉【縄文最新研究】
縄文時代の謎109 #04

縄文土器(「縄文土器深鉢」京都国立博物館蔵/出典:Colbase)
■昆虫食の可能性もある縄文のムシたち
縄文土器の表面にあいた孔(圧痕)にシリコンを注入して、圧痕の形を型取りし、それを顕微鏡によって調べるというレプリカ法を紹介した。しかしながら、実際に土器の表面にあいた圧痕を調べると、植物の痕跡以外にも様々な昆虫が土器の胎土中に含まれていたことがわかってきた。
たとえば、青森県三内丸山遺跡から出土した土器には、カミキリムシの幼虫による圧痕があったことがわかっている。カミキリムシの幼虫は、オーストラリア先住民の間などでは重要なタンパク質供給源ともなっていることから類推して、縄文人がカミキリムシの幼虫を食べていたのではないかとも想定されている。縄文時代に何らかの昆虫食が存在したことは、まず間違いないところなので、この事例は縄文人の多角的な食料獲得戦略を指し示す重要な証拠として扱うことができるだろう。
また、土器の中に含まれていた昆虫にはコクゾウムシがある。コクゾウムシは、コメにつくことから、しばしば稲作があった証拠として取り上げられたことがあった。しかしながら、その後の調査で種子島にある三本松遺跡から出土した縄文時代早期の土器からもコクゾウムシの痕跡が発見されたことにより、縄文時代のコクゾウムシは縄文人たちが貯蔵したドングリなどの堅果類を加害する害虫で、古くから日本列島に住み着いた在来種であることが明らかにされている。現在ではコクゾウムシの痕跡は、九州だけでなく、東北地方や北海道の土器からも見つかっている。
この他、宮崎県上か 田代遺跡や鹿児島県小牧遺跡、山梨県堰口遺跡などから出土した土器からは、ゴキブリの卵の圧痕が見つかっている。縄文人もゴキブリに悩まされたのかもしれない。
監修・文/山田康弘