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朝ドラ『あんぱん』一目惚れした女学生の親から恐怖の手紙が… 史実でも悩んだやなせたかし氏の初恋

朝ドラ『あんぱん』外伝no.10


NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』、第3週は「なんのために生まれて」が放送中だ。学校の先生になるという夢を見つけた朝田のぶ(演:今田美桜)は、そのきっかけをくれた貴島中尉(演:市川知宏)や、パン食い競争中に自分を助けてくれた千尋(演:中沢元紀)に感謝する。一方、嵩(演:北村匠海)は、のぶが他の男性と親しくしている様子をみて、モヤモヤした気持ちを抱えることになった。今回はやなせたかし氏が明かしていた初恋の苦い思い出を取り上げる。


 

■汽車で見かけた女学生に一目惚れ

 

 朝ドラ『あんぱん』では、のぶが貴島中尉や弟・千尋と親しげにする様子をみて「jealousy」つまり嫉妬という感情を抱くようになっている。しかし、今回のぶが嵩の幼馴染というのは物語のなかだけの設定で、モデルである小松暢さんは当時高知県にはいなかった。史実では、また異なる恋愛を経験しているのだ。

 

 嵩さんは小学校を首席で卒業すると、高知県立高知城東中学校(現在の高知県立高知追手前高校)に進学した。この学校には縁があり、かつて前身の高知県立第一中学校には父・清さんと伯父・寛さんも通っていた。後に弟の千尋さんも同じ中学校に通う。

 

 学校へは後免町から汽車通学になった。そこで嵩さんはとある女学生を見かけて一目惚れしたという。寝ても覚めてもその女学生のことが頭から離れず、勉強もおろそかになっていった。小学校の頃は秀才で知られた嵩さんだったが、中学に入ると成績は急降下。とはいえ、後にご本人が回顧した時の発言によると200人中7080番くらいだったというから、取り立てて落ちこぼれというわけではなかった。それでも、地元ではトップだった嵩さんにとっては苦しい状況だっただろう。

 

 女学生への恋心は募るばかりで、ますます勉強が手につかなくなっていく。そこで嵩さんは何を思ったか、女学生に恋文を送ることにした。そしてそのチャンスは、夏休みに巡ってきた。

 

 幼少期から嵩さんと千尋さんは、夏休みになると父方の祖母が住んでいる在所村朴ノ木に遊びにいくのが恒例だった。在所村は2人の両親の出身地でもある。その年も祖母の元で夏休みを過ごしていた嵩さんは、実名ではなく変名で意中の女学生に対して恋文を送った。住所を知っていたということはそれなりに交流があったのか、それとも知人を通じて知ったのかは不明だが、女学生にしてみれば一見よくわからない名前の人物から突然恋文が届いたのだから、驚いたことだろう。

 

 その後すぐに返事が届き、嵩さんは心躍った。そしてどきどきしながら開封し、手紙を読んだのだが、残念ながらそれは女学生本人ではなく彼女の父親からの返事だった。そこには「今度このようなことをしたら学校に言う」という旨の明確な警告が記されていたのである。こうして、嵩さんの恋はあっけなく終わったのだった。

イメージ/イラストAC

<参考>

■梯 久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(文春文庫)

■やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)

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歴史人編集部れきしじんへんしゅうぶ

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