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江戸庶民の心をつかんだ伝統芸能「浄瑠璃」

蔦重をめぐる人物とキーワード⑪


3月16日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第11回「富本、仁義の馬面」では、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が浄瑠璃(じょうるり)の富本節に初めて触れる様子が描かれた。庶民を熱狂させる娯楽を目の当たりにして、蔦重は次なる仕掛けの手がかりをつかむのだった。


■富本節の美しい響きが蔦重を突き動かす

愛知県・知立神社で行なわれている祭礼「知立まつり」の様子。山車の上で人形浄瑠璃芝居が上演されるのが特徴で、江戸時代から受け継がれてきた伝統芸能を見ることができる。祭りの開催は毎年5月上旬の2日間で、国指定の重要無形文化財。

 将軍に献上するという、話題性も加わった蔦重の渾身作『青楼美人合姿鏡』だったが、一部では高く評価されたものの、庶民には高すぎる価格設定だったこともあり、期待通りの結果にはつながらなかった。

 

 吉原に人を呼ぶ次なる策を考える蔦重に、女郎屋の大文字屋市兵衛(だいもんじやいちべえ/伊藤淳史)は、吉原で祭りを開くことを提案する。同じく女郎屋の大黒屋のりつ(安達祐実)は、祭りの目玉に浄瑠璃の人気太夫である馬面太夫(うまづらだゆう/寛一郎)を招きたいと言い出した。ところが、馬面太夫は吉原嫌いを理由に、蔦重らの願いを断った。

 

 浄瑠璃の流派の一つである富本節で、二代目・富本豊前太夫(とみもとぶぜんだゆう)の襲名を間近に控える馬面太夫は、鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ/片岡愛之助)から、富本節で初となる直伝本を出すことを熱心に誘われている。そんな話を聞いた蔦重は、ますます馬面太夫を引き込もうと奔走する。

 

 太夫の心を動かすには、他の流派から横槍を入れられて、なかなか前進しない襲名を実現させるしかない。そう考えた蔦重らは、浄瑠璃の元締めに当たる当道座の鳥山検校(とりやまけんぎょう/市原隼人)のもとを訪れ、後ろ盾を請う。鳥山の妻となった元・花魁の瀬以(せい/小芝風花)も、吉原の住人である蔦重らの願いを何とか聞き入れてもらいたいという気持ちだ。

 

 その後、蔦重は女郎たちを連れて馬面太夫を接待する。蔦重に請われて聞かせた富本節に心を打たれ、涙する女郎たちを見た馬面太夫は、吉原の祭りへの参加を快諾した。

 

 そこへ鳥山から「豊前太夫」襲名を認める知らせが届く。これを聞いた太夫は、蔦重のもう一つの望みである、富本節の直伝本を蔦重の本屋から出すことも約束したのだった。

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小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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