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田沼意次が目指した「重商主義」とその再評価

蔦重をめぐる人物とキーワード⑥


2月9日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第6回「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」では、鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ/片岡愛之助)のもとで蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が新たな本作りに取り組む様子が描かれた。そのなかで蔦重は、孫兵衛の本に対する真摯な姿勢に触れる一方で、「偽板作り」という裏の顔を知ることになる。


江戸随一の版元・鱗形屋に潜む影

静岡県の牧之原市史料館前に立つ田沼意次の銅像。2021年に建てられたもので、同館には田沼意次にまつわる資料が多数展示。牧之原市では田沼意次の人物像の再評価を求め、盛んに顕彰活動が行なわれている。

 鱗形屋お抱えの改め(情報収集や編集を行う者)として吉原の案内本『吉原細見(よしわらさいけん)』の改良を目指す蔦重は、鱗形屋孫兵衛から巷で評判となるような入銀本を考えるよう依頼される。

 

「青本はつまらない」との声を聞いた蔦重は、江戸っ子が楽しめるような青本を作ることを思いつく。青本が売れるようになれば、新たな読者層を開拓することができる。蔦重の提案に孫兵衛も賛同し、ともに製作に乗り出すこととなった。新たな青本にふさわしい筋を話し合うなか、蔦重は本作りに対する孫兵衛の真摯な姿勢に感嘆する。

 

 一方、江戸城では田沼意次(たぬまおきつぐ/渡辺謙)らの進める政策により、幕府の財政が明和の大火以前まで持ち直したことが報告されていた。これを受けて松平武元(まつだいらたけちか/石坂浩二)は日光社参を執り行うことを提案。多額の費用を必要とするため意次は難色を示すが、将軍・徳川家治(とくがわいえはる/眞島秀和)に進言するよう強く要請されたのだった。

 

 そもそも社参を求めているのは、次期将軍と目される徳川家基(いえもと/奥智哉)だった。家基が意次を目の敵にしていると家治に聞かされた意次は、やむなく社参を進めざるを得なくなった。

 

 そんななか、鱗形屋に長谷川平蔵(はせがわへいぞう/中村隼人)がやってくる。平蔵は大坂の柏原屋から『新増早引節用集』という字引が偽板であるとの通報を受け、調査していた。大量の『新増早引節用集』と版木が見つかったことで、孫兵衛は捕縛。蔦重の密告ではないかと疑いの眼差しを向けながら連行されていった。蔦重は孫兵衛の裏の顔を知りながら、どこにも告げ口できない苦悩を抱えていた。

 

 いつか鱗形屋に取って代わることを望んでいた蔦重だったが、後味の悪さを感じながら、その背中を見送ったのだった。

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小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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