あの有名歌手が2度も願掛け! 縄文杉に匹敵する樹齢3000年のご神木とはいったい 八坂神社/高知県大豊町
神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第12回】
津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。

根元で株がくっついた夫婦スギの大木。大きい方の南大スギは樹高約60m、根周り約20mの巨木。北大スギも樹高約56m、根回り約16.5mと負けていない。 撮影:森田季節
■昭和の名曲を聴きながら、平成の次の年号が決まったことを知る
寺社好きと巨樹好きが交わる接点がご神木です。各地の神社(ともちろん寺院)には神仏の宿るもの、あるいは信仰対象そのものとして祀られている巨樹が珍しくありません。僕は巨樹好きではないのですが、寺社を巡っていると結果的にとてつもないご神木を目にすることはあります。
そんなとてつもないご神木があるのが、八坂神社です。といっても、この神社名だけでは日本中に同名のものがありますし、固有名詞的に考えれば京都の祇園にある八坂神社が一番有名だしというわけで、全然具体性がありません。けれど、この八坂神社、ご神木のほうはとてつもなく有名です。その名も杉の大スギ。「杉」か「スギ」か、表記を統一しろと思われるかもしれませんが、これは意図的です。というのも、この大スギは大豊町杉(おおとよちょうすぎ)という地名の場所にあって、最寄り駅の駅名は大杉駅。杉だらけで無茶苦茶わかりづらくなるんです。
大杉駅は特急停車駅なのですが、そもそも各駅停車の本数が極端に少ない、秘境に近い場所にあります。僕が訪れた2019年の時も特急を下車したのは自分だけで車掌さんが特急券と切符を回収していきました。車掌さんが対応したら特急が遅延するリスクがあるのではと思うのですが、それぐらい下車する人が少ないんでしょうね……。なお、2駅隣の大田口駅から3キロほどのところに四国最古の建造物で国宝の豊楽寺(ぶらくじ)薬師堂がありますが、大田口駅は極端に停まる列車の数が少ないので見学の際はご注意ください。道もわかりづらく、自分も道に迷いました……。
大杉駅を出て少し歩くと「従是上二丁 日本一の大杉」の戦前に建ったとおぼしき石碑が見えます。それをたよりに進むと八坂神社の鳥居が現れます。この神社の境内に日本一と石碑にあった大スギがあります。推定樹齢3000年という、日本という国名が誕生するはるか前から生えているとんでもない大木です。

八坂神社の拝殿。境内に入る鳥居の前に料金所がある。撮影:森田季節
事前の情報をあまり仕入れずに現地に行ったのですが、ぶっちゃけたところ、こんなのアリ!?と思いました。ぱっと見だと大スギは明らかに2本あるんです。てっきり1本がどーんとあるのだと思っていたので、2人組ユニットみたいな扱いを想定していませんでした。本の解説を読むと、「2株が根元で合着している」と書いてあるので、それならまさしく2人組ユニットですね。大スギの前の石碑には「特別天然記念物 杉ノ大杉」とあり、ここでもまた表記がユレました。
近くに美空ひばりさんの歌が流れる碑があります。この大豊町で美空ひばりさんは子供の頃バス事故に巻き込まれ、かろうじて助かりました。療養後、日本一の歌手になれるようにと大スギに願掛けをして、見事大スターになった――そんないわれがあります。「川の流れのように」のメロディーが流れる中、自分の携帯電話には「次の年号が令和に決まったぞ」というメールが届いていました。昭和の名曲を聴きながら、平成の次の年号が決まったことを知るという奇妙な体験を高知の山中で体験しました。

お手製の説明書き。拝殿の彫刻にも目を凝らしてみよう。撮影:森田季節
大スギの近くでイノシシ肉入りのゴワゴワ十割そばの立川(たぢかわ)そば、銀不老(ぎんふろう)という珍しい種類のマメを使ったロールケーキ、碁石茶(ごいしちゃ)という日本唯一らしい完全乳酸発酵のすっぱすぎるお茶と、情報が渋滞している食事をとりました。ただの偶然ですが、令和に決まった日の食事をやたらと詳しく覚えることになりました。