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「ぽんぽこ」をお参りするため、鳴門海峡の南北にある神社を旅する 金長神社/徳島県小松島市、芝右衛門大明神/兵庫県洲本市

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第8回】


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


 

どーんと現れる巨大すぎるたぬきの像。撮影:森田季節

■アニメにもなった阿波狸合戦の総大将を祀る

 

 「神社に狐はいるのに狸はいないんだね」みたいなことを子供の頃に親に言ったりしたこと、日本で育った人なら一度はあると思います。それぐらい日本中に稲荷神社はありますし、稲荷神社といえば神様の使いの狐だというイメージは強固だと思います。

 

 では狸にちなむ神社はあるのかというと、ないこともないです。今回は狸そのものが神様として祀られている神社を紹介いたします。まずは徳島駅から約20分鉄道に乗って、南小松島駅へ。駅前から狸像があるぐらい小松島市は狸を推しているところです。駅の北に歩いて行くと、広い公園に巨大すぎる狸の像が! あまりのスケールにこれを見ただけでも来てよかったなと思いますが、目的の神社はもっと北です。

 

 てくてくと歩いて金長(きんちょう)神社へ。こちらの祭神は金長大明神。おそらく江戸時代の末に成立したといわれる阿波狸合戦というお話の総大将にあたる狸様です。境内には当然のように狸の置物が置かれています。一時期、立ち退き報道のようなものもありましたが、少なくとも2024年の段階で神社は残っていて、参拝もできました。

阿波狸合戦の総大将を祀る金長大明神。撮影:森田季節

 さて、この阿波狸合戦の中に芝右衛門狸という狸も登場します。この狸は徳島から海を渡った先の淡路島の城下町、洲本に住んでいたとも言われていますが、しっかりと洲本のほうでも狸が祀られています。

 

■なかなかに狸密度の高い淡路島

 

 鳴門海峡を渡って徳島県から兵庫県の淡路島へ。今は別の県ですが江戸時代は淡路島も徳島藩の土地で、文化圏的にも近いものがあったはずです。山上にある洲本城のふもとの地区には足湯スポットもありますが、足湯の中には笑顔の狸像が建っています。周囲には手ぬぐいだかタオルだかを頭に載せた狸像も。近くの神社境内に狸像があったりと、こちらもかなりの狸の密度です。

洲本城の石垣。お城好きも唸らせる本格的な石の城。撮影:森田季節

 遊歩道の山道を15分ほど登って、洲本城の石垣が目立つところにまで上がります。本格的な石垣の城で、このお城のためだけに来る価値も十分にあります。その城の本丸の一角に小さな神社がちょこんとあります。額には「芝右衛門大明神」の名前が。というわけで、洲本城の本丸にも狸が神として祀られています。案内板には身長が6尺あったと書いてありました。つまり約1メートル80センチということですが、そのサイズの狸がいたら無茶苦茶怖い! そりゃ実在したら神様扱いされる!

本丸に鎮座する芝右衛門大明神。撮影:森田季節

 洲本の城下町に戻っても、時々、狸像が目に入りました。そのうち一匹の武左衛門(ぶさえもん)は案内板によると、夜に街の見回りをして、戸締りがしてない家は鍵をかけたそうです。泥棒の逆バージョンみたいなものでしょうか。たまには狸もお参りしておこうと思われた方は鳴門海峡の南と北にある街にお出かけください。

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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