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唯一無二の景観、石段を上りきった先には本殿ではなく線路が!? 陶山神社/佐賀県西松浦郡有田町

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第5回】


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


神社の境内を横切るJR九州の特急電車。なお、この写真は石段とは逆側の境内奥から撮影。このほかにも長崎県、佐賀県の2県を運行する「ふたつ星4047」も通過する。撮影:森田季節

■石段を一段一段進んでいくとそこには・・・

 

有田焼で著名な有田町に陶山神社はあります。明治21年(1888)に寄進された国の登録有形文化財の磁器製の鳥居が美しい神社ですが、ここにはそれ以外にもものすごく特徴的な要素があります。

 

それが神社の参道をぶった切るJRの線路! 参道が線路で分断されているタイプの寺社は各地にあって、撮影スポットになってるような場所もありますが、陶山神社はことさら強烈です。

 

まず、踏切に遮断機がありません。それぐらいならほかにも類例があると思われるかもしれませんが、この神社の場合、石段を上がりきった直後に線路があります。石段を一段一段進んでいくと、突如開けた視界に線路が現れて衝撃を受けます。もし何も知らない人が石段を駆け上がって神社を目指した場合(そもそも参道を走るべきじゃないですが、それはそれとして)、列車にぶつかるリスクもありそうで大丈夫なのかと心配にもなる立地ですが、遮断機はなくても警報機は設置されているので大半の人は踏切の存在にも気づけるようです。

 

石段を上がってきた側から撮影するとこんな視界に。陶山神社参道に堂々と設置されている線路。遮断機は見当たらない。この目の前を特急が走るとかなり恐ろしそうだ。鳥居脇の狛犬は青銅製としては日本一の大きさを誇るのだという。こちらも必見だ。撮影:森田季節

 

神社側からすれば土地の一部を鉄道側に侵食されているわけですし、警報機があるとはいえ踏切での事故のリスクも増えるので、歓迎されているのかは正直なところ不明ですが、この踏切のおかげで唯一無二の景観になっているのは間違いないです。

 

実際、自分も有田旅行で一番に思い出すのはこの神社の踏切を通過する特急車両です。二番目が最初に紹介した磁器製の鳥居です。色味があるといってもたいていが朱色の神社で、普通は目にすることのない青色顔料の呉須がこうも映えるものかと驚かされます。境内にはほかにも磁気製品の灯籠や、本殿の磁器製玉垣など記憶に残る景観が随所にあります。

 

陶器製の鳥居と社殿を囲む玉垣。白磁に描かれた蔓草文様が美しい。撮影:森田季節

ほかにも有田は煉瓦の廃材などを利用したトンバイ塀の街並みや、豆腐とプリンの間みたいな食べ物の「ごどうふ」など、磁器に何の興味もない人でも楽しめる要素が集まっていて、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている観光地の中でも、とくにおすすめしたい場所です。

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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