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宝くじが当たる!?パワースポット的なお寺 なかには10億円当たった方もいるとか 長福寿寺/千葉県長生郡長南町

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第3回】


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


寺院の案内とは思えないようなインパクトがありすぎる看板。 撮影:森田季節

■現世利益の祈願をアレンジして遊園地化したお寺

 

 外房線の茂原駅からバスで郊外に移動すると、その途中、やけに派手なものが視界に入ります。それが長福寿寺(ちょうふくじゅじ)の門の前に立つ黄金のゾウの像です。期せずしてダジャレみたいになってしまいましたが……本当にゾウの像です。勇ましいというよりかわいいが勝っていて、どことなく招かれている気にもなります。招き猫ならぬ招きゾウでしょうか。

 

 境内すべてがギラギラに派手というわけではないのですが、本堂の少し手前の木の板には(2021年参拝当時)「10億円当せん!!」の張り紙が! その先の本堂の両脇には狛犬の上位互換みたいな巨大なゾウの石像が控えています。その近くには「最強大金運」と書いたのぼりが並んでます。もはやパチンコの店でも近くにあるのかという勢い!

 

 もう、今更説明しなくてもおわかりかもしれませんが、この長福寿寺、宝くじ祈願でご利益があるとして著名な寺院です。そのパワーを求めてなのか、単純に派手なお寺を見てみようという観光目的なのか、決して都市部ともいえない場所にある寺院に多くの参拝客が訪れていました。まったく人の気配のない寺社に行くことも珍しくない自分としては、このにぎわいは衝撃的でした。

 

門前に立つ金ぴかのゾウの像。快晴の日だったので、陽光を浴びていよいよ力強く輝いていた。撮影:森田季節

 

 宝くじが当たるというと、「信仰の場として不適切ではないか、不真面目ではないか」と思う方もいるかもしれませんが、よくよく考えてみると勝運でご利益がある神社も、必勝祈願を受けつけている寺院もたくさんあるわけで、このお寺だけが特殊ということではないです。むしろ昔から行われてきた現世利益の祈願を今風に調整して、観光スポットにまでしてしまったところがこのお寺の特徴ではないかと思います。

 

 変わった点を書く記事なので派手なところを並べましたが、一方でこのお寺は門にしろ本堂にしろ、派手な色で塗り替えられているわけでもなく伝統的なスタイルを保持しています。派手さの演出は追加でモノを設置したり、境内の隅に売店を置いたりするような方法で行われていて、守るべきところはしっかりと守りながら、楽しい場所を作っていらっしゃるなというのが素直な感想です。

 

ゾウの姿が目立つが、本堂は伝統的な風格ある姿。新旧が程よく同居している。撮影:森田季節

 

 京都や奈良といったところに行くのでなければ、寺社を観光の目玉にしない方も多いと思います。そういう寺社に行かない層にも選ばれている寺院なわけですから、これはこれでよいことではないでしょうか。

 

 また、比較的近いところに(1キロ半ほど?)県指定文化財の巨大な本堂のある称念寺もあります。派手な寺院は性に合わないという方でもこちらは楽しめるかと思います。2つの寺院を比べてみるのもよいかもしれません。

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過去記事

森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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