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ゴルフ場に合法侵入する以外に参拝方法がない! 竜ヶ谷の雷電神社/埼玉県入間郡毛呂山町 

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第1回】


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


古びた注意書きの看板。事前に神社があると把握していなければ、ふらっと立ち寄るには勇気がいる。撮影:森田季節

■参拝目的でのみ私有地への立ち入りを許可

 

 神社の中には山頂付近にあったり、島の中にあって船がないと参拝不可能だったりと、物理的に到達しづらい場所にあるものが珍しくありません。また、街の中にあるのに法的に入れない神社も無数にあります。昔の邸宅の庭に勧請された神社や、会社のビルのてっぺんに祀られた神社です。参拝に行くと不法侵入になります。

 

 今回取り上げる神社は参拝目的でのみ私有地に立ち入ることが許されているところです。JR八高線の毛呂駅から昔ながらの農村を歩いた先にその神社はあります。のどかとしか言いようのない道を2キロ弱歩いていると、雷電神社の案内板が出てきます。案内板の矢印にしたがってそのまま進むと神社の名を示す立派な石柱もあるので、これは誰が見たって神社があるとわかります。

 

 しかし、同時に周囲には「ゴルフ終了後にゴルフ場を散歩したりしてると、場合によっては不法侵入とみなします」という意味合いの看板も設置されています……。そう、この雷電神社は参拝のためにゴルフ場の敷地を通るしかない場所にあるんです! ただ、看板には「雷電神社参拝その他神社関係以外の通行はご遠慮下さい」とも書いているので、平日の常識的な時間に参拝することは認められているわけです。

 

ゴルフ場の通用門にしか見えないが、これも参道の一部。ゲートを開けた場合は必ず閉めておこう。撮影:森田季節

 この言葉を信じて先に進むと、登山をしているとたまに害獣対策で見るような、いかめしい金属製のゲートが見えます。これを開けてさらに進むと、丘にまばらに木が生えている典型的なゴルフ場の景観が広がります。こんなところに神社があるようには思えませんが、よく見ると神社を示す矢印があり、ゴルフ場内部に残された低山に上がる階段があります。

 

 このまま上がっていくと、山中によくある神社の参道という雰囲気に変わり、立派な鳥居も見えてきます。田舎によくある集会場を兼ねているような平屋の社務所らしき建物も社殿の少し下の平坦地にあります。ここだけ見れば、この神社がゴルフ場を突っ切った中にあるとは誰も思わないでしょう。

 

ここまで来れば、社殿ももうすぐ。ゴルフ場の内部とはとても思えない景観だ。撮影:森田季節

 

 社務所から社殿まではまた石段を上がりますが、神社としての意外性などはありません。ただし、神社周辺は中世の城跡で、竜ヶ谷(りゅうがや)城跡として埼玉県の遺跡に選定されています。神社周辺には城の遺構なのかもというような平坦面もありました。

 

 神社に通じる道を参道と定義するなら、ここまで参道が特殊な神社もなかなかないと思います。ルートが変わってる神社に行きたいという需要はあまりないと思いますが……ゴルフに興味はないけどゴルフ場に合法侵入したい方は参考にしてください。

 

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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