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男の”アレ”の頭のこと「雁(かり)」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語58


江戸時代の性に関する言葉は、現代まで使われ続けているものから、変化して意味が異なるもの、まったく使われなくなったものなど様々である。


 

■雁(かり)

 

 陰茎の亀頭のこと。雁首(かりくび)ともいう。

 

 ただし、雁首(がんくび)は煙管(きせる)の煙草を詰める部分のこと。

 

【図】雁の先につばきを塗り(『天野浮橋』柳川重信、天保元年)、国際日本文化研究センター蔵)

 

(用例)

①春本『百色初』(宮川春水、明和中期)

 

 女が、男の陰茎を称賛する。

 

「おお、よく生(お)えてある。握り心のよい太さ。この雁のところで、上の方をの。早く、こすりたい」

 

「生える」は、勃起のこと。亀頭でクリトリスを刺激してほしいのであろうか。

 

②春本『艶本千夜多女志』(勝川春潮、天明五年頃)

 

 女が男の陰茎を握ったり、なでたりしながら、言う。

 

「大きなものだぞ。この亀頭(かり)とやらの高さ、もとより頭のこの太さ、やわらかさ、わっちが手で、それ余るよ」

 

 亀頭に「かり」という読み仮名を振っている。

 

③春本『天野浮橋』(柳川重信、天保元年)

 

 吉原の遊女・小紫と客・清吉の初会の寝床。清吉がはやるのを、小紫は、

 

 股を広げながら、左の手にて一物(いちもつ)をしっかと握り、小紫、
「ああ、お待ちよ」
 と、指につばきをつけて、一物の雁先(かりさき)へ塗り、玉門にあて、下よりぐっと持ち上げると、雁先ぬらりと入ると、

 

「雁先」は、亀頭の先端の意味。

 

 上の【図】は、小紫と清吉の情交の様子である。

 

④春本『仮枕浮名の仇波』(歌川国政、安政元年)

 

 女の名器に感激して、男が言う。

 

「それ、それ、こうか、よかろう。おいらも、よくって、こたえられねえ。あれの頭がちぎれるようだ。おや、おや、奥から煮え湯のような熱い淫水が雁首へしみ込んで、もう、もう、体中の気が一度にいきそうだよ」

 

「あれの頭」は亀頭のこと。

 

⑤春本『比翼形交合』(恋川笑山)

 

 女が上になり、茶臼で始めた。

 

 雁首ぬるりと入りしかば、男は得たりと、仰向けにて、女の尻を両手に抱え、すかり、すかりと持ち上げるに、女は、
「はあ、はあ、すう、すう」
 と、鼻息荒くよがりだし、

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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