女は感度が増し、男は味わいが増す「練れる(ねれる)」【江戸の性語辞典】
江戸時代の性語55
我々が普段使っている言葉は時代とともに変化している。性に関する言葉も今と昔では違う。ここでは江戸時代に使われてた性語を紹介していく。
■練れる(ねれる)
女はよく歩くと陰部が練れ、男にとって味わいが増すと考えられていた。また、女の方も感度がよくなると言われた。
(用例)
①春本『股庫想志春情抄』(勝川春章、寛政七年頃)
男が女の陰部をまさぐりながら言う。
「いっそ、よく練れている。出すは、出すは。とろろ汁のようになった」
女は歩いたあとなのであろうか。淫水の量が多いようだ。
②春本『艶情二葉の由来』(歌川国麿、嘉永五年頃)
長旅をしてきた男女。男が女と情交しながら、感想を述べる。
「二十日あまり道中したから、ぼぼの中が練れて、練れて、求肥(ぎゅうひ)のようになっているから、普段のぼぼとは大違いで、べったり、べったり、へのこへ吸い付き、ソレソレ、どうも、頭がもぎれてしまいそうだ」
求肥は、柔軟で弾力のある菓子のこと。
頭は、亀頭のことであろう。
③『旅枕五十三次』(恋川笑山、嘉永年間)
東海道の掛川宿は葛布(くずふ)が名産で、機織(はたお)りに従事する女が多かった。こうした機織りをする女について、
機織りの技は一日、玉門すれて、ほめき強く、常にうるおいいるゆえ、その味よきこと、たとうるものなし。開(ぼぼ)の内、熱して、へのこ、とろけるが如し……(中略)……機織りにかぎらず、総じて練れたる開(ぼぼ)より出ずる淫水はひとしお熱く……
と、その陰部を絶賛している。
機織りで足を動かしているので、練れているというわけだ。
④春本『仮枕浮名之仇波』(歌川国貞二代、安政元年)
女房が浜遊びをして戻った夜、旦那がさっそく陰部に手をのばす。
「てめえは今日、浜中を駆けまわって、さぞくたびれたろう。しかし、練れ加減は極(ごく)というもんだぜ」
と、股座(またぐら)へ手を差し入るれば、
図は、女房の陰部の練れ具合を指でたしかめているところである。

【図】練れ具合をたしかめる(『仮枕浮世之仇波』歌川国貞二代、安政元年、国際日本文化研究センター蔵)
⑤春本『閨中膝磨毛』(文化~嘉永)
京都から旅をしてきた女を、男が箱根の山中でさそった。
ことに旅路に練れたる玉門、なにかはもってたまるべき、淫水ぬらぬらと流れいで、顔は上気して、
「いっそ、どうもならぬ」
と、しがみつく。
陰門が練れているためか、女は積極的だった。
[『歴史人』電子版]
歴史人 大人の歴史学び直しシリーズvol.4
永井義男著 「江戸の遊郭」
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