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男の指が女の股の奥に侵入していく「そらわれ」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語52


言葉は時代とともに変化していく。江戸時代の「性」に関する言葉は現代まで使われているものから意味が変化したもの、なくなってしまったもの……など。ここでは江戸時代の「性」に関する言葉を紹介する。


 

■そらわれ

 

「そらわれ」は「空割」とも表記し、春本や春画の書入れにはよく出てくるが、女性器のどこをさしているのか、はっきりしない。

 

 小陰唇を意味することもあれば、膣口をさしていることもあるようだ。

 

【図】指でそらわれをさぐる(『色能知巧左』喜多川歌麿、寛政十年、国際日本文化研究センター蔵)

 

【用例】

 

①春本『御覧男女姿』(勝川春英、寛政元年)

 

 男が女の股に手をのばす。

 

 さっそく股座(またぐら)へ手をやり、まず毛の薄々としたところより、そらわれなぞのところを、そろそろといらいみれば、はや女はたまりかね、鼻息すうすうといって、

 

 男の指がそろそろと進んでいくのがわかる。

 

②春本『開談遊仙伝』(歌川貞重、文政十一年)

 

 男は、仙花と言う女と始めた。

 

 仙花が上に乗りかかり、大物の頭にて、そらわれより、さねのあたりをぬらり、くらりと、すべらかし、こすりまわされ、

 

「さね」はクリトリス。男は巨根の亀頭で、膣口からクリトリスと刺激したのである。

 

③春本『艶画四季時計』(柳川重信二代、天保五年)

 

 男は体位を変え、後取りにする。

 

 女を向うへ向け、腰をかかえてずるずるずると、後ろの方より入れ直し、そらわれかけて突きたつれば、淫水流れて滝の如く、

 

 そらわれがどこを意味するのか、やや判然としないが、膣と考えてよかろう。

 

④春本『春色一休問答』(柳川重信二代、天保十一年)

 

 生娘を破瓜する場面。

 

 女の尻へ両手をまわし、ぐっと引っ立て、これを見るに、きめ細やかに色白く、ひたい口ふくれ、細く長きそらわれのとまりを二、三分上へあがり、薄毛もやもやと生えたるは、

 

「そらわれ」の意味する部位がはっきりしない。クリトリスのようでもあるが。

 

⑤春本『閨の友月の白玉』(歌川貞升、天保年間)

 

 男の手が女の股にのびる。

 

 やがて、手をのばして前をまくれば、縮緬(ちりめん)の湯文字(ゆもじ)、手の先にひらひらと当たるこころよさ、それをかき分けて、玉門のひたいぎわ、そらわれのあたりをいじるに、むくむくとはえたる毛の容体、すべすべ、やわやわとする肌ざわり、

 

 男の指が女の股の奥に侵入していく様子が描かれている。

 

 湯文字は、女の下着である腰巻のこと。

 

 玉門の「ひたいぎわ」、「そらわれ」とあるが、要するに膣口の周辺であろう。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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