桃太郎の鬼の正体は「百済の王子」だった!? 鬼を倒した吉備津彦(きびつひこ)とは?
鬼と呪術の日本史
岡山に残る桃太郎伝説では、鬼ノ城に住み着いた温羅(うら)という百済の王子を、吉備氏の祖先・吉備津彦が倒したということになっている。どんな伝説だったのか、見ていこう。
■鬼ノ城の住処跡などその痕跡を明確に残す

鬼ノ城 温羅が築いたとされる山城。
【時代】古墳時代
【出典】伝承
【地域】岡山県など
日本各地に、多様な桃太郎の鬼退治伝説がみられる。そして桃太郎伝説の代表的な例には、岡山市吉備津(きびつ)神社のものと、高松市女木島(めぎしま)の話がある。
前者は、古代に吉備(きび/岡山県の大部分と広島県東部)を治めた豪族、吉備氏の祖先にまつわるものだ。吉備津神社は、吉備氏の祖先の吉備津彦(きびつひこ)を祀った古代から続く有力な神社である。
その神社の伝承には、11代垂仁(すいにん)天皇の時に百済(くだら/朝鮮半島の小国)の王子温羅(うら/おんら)が神社の近くにある鬼ノ城(きのじょう)に住みつき、略奪などを行っていたとある。
そのため吉備津彦が天皇の命令を受けて吉備に下向し、温羅を退治して吉備の領主になったという。
吉備津彦の子孫は、長期にわたり、吉備の地を治めた。吉備津彦が温羅の首をはねたところ、その首は怨みを込めた唸(うな)り声を上げ続けていたと伝えられる。そのため吉備津彦は、その首を自分の宮の御釜(おかま)殿に埋めた。ところが声は止まない。そこで温羅のお告げに従って、温羅の妻に御釜殿で神饌(しんせん/神に供える御飯)を炊かせることにした。
これが、吉備津神社の鳴釜(なるかま)神事の起こりだという。
監修・文 武光誠