現在も運用が続く旧ソ連が生んだ傑作機【MiG-21フィッシュベッド】
超音速時代の到来~第2世代ジェット戦闘機の登場と発展~【第9回】
第2次世界大戦末期から実用化が推進された第1世代ジェット戦闘機は、朝鮮戦争という実戦を経験して完成の域に達した。そして研究はさらに進められ、亜音速で飛行する第1世代ジェット戦闘機を凌駕する超音速飛行が可能な機体が1950年代末に登場。第2世代ジェット戦闘機と称されて、超音速時代の幕が切って落とされた。前シリーズに続いて本シリーズでは、初期の超音速ジェット戦闘機(第2世代ジェット戦闘機)について俯瞰してゆく。

全天候戦闘能力を備えたMiG-21SM(NATOコードネームはフィッシュベッドN)。主翼内側のラックには赤外線誘導空対空ミサイルのエフィッド、主翼外側のラックにはアトールのバリエーションであるセミアクティブ・レーダーホーミング型を懸吊している。
「ミグ」といえば、それが東側の代表的な戦闘機であることは、一般的にもかなり知られている。米ソの二大国が対立していた東西冷戦時代には、朝鮮戦争でMiG-15ファゴット、1960年代以降の紛争や戦争、特にヴェトナム戦争ではMiG-21フィッシュベッドが、この「ミグ」として西側の各種戦闘機の好敵手であった。
1955年6月に初飛行したMiG-21は、デルタ翼の主翼に後退翼の水平尾翼を組み合わせた単発エンジンの機体で、軽量かつ堅牢な構造で設計されていた。
開発の方向性としては、空対空戦闘に向いた制空戦闘機であり、メンテナンスが容易で稼働率の高い軽戦闘機というのが当初の設定であったようだ。そのため、初期に実戦配備された機体は制限天候戦闘機であった。それでも、優れた格闘戦(運動)性能と誘導用レーダーを必要としない赤外線誘導の空対空ミサイルであるアトールを搭載することで、優れた制空戦闘機として運用された。
たとえばヴェトナム戦争では、赤外線誘導のサイドワインダーとレーダー誘導のスパローという2種類の空対空ミサイルを搭載した重戦闘機のマクドネル・ダグラスF-4ファントムIIに対して、軽戦闘機の特性を生かして善戦している。また初期の中東戦争でも、同様にMiG-21は西側の戦闘機各種を相手に、ソ連空軍の開発コンセプトにのっとった戦いぶりを示した。
やがてMiG-21にも本格的なレーダーが搭載され、全天候戦闘能力とレーダー誘導空対空ミサイルの運用能力が備えられた。その結果、従来の運用の容易さに加えてより強力な空対空戦闘能力を持つことになり、有力な軽戦闘機として、よりいっそう高い評価が与えられた。
特に格闘戦性能に秀でていたことがMiG-21の高い評価のポイントだが、一方では、低高度域での操縦性の低下が弱点のひとつであった。
しかし廉価でメンテナンスが容易、しかもそれに見合った性能でコスパの良いMiG-21は改修が重ねられて性能が逐次向上。このような背景もあってチェコスロヴァキアやインドではライセンス生産され、中国はJ7としてライセンス生産をおこなっただけでなく、独自の大幅な発展型を展開している。
なお、ソ連製のみでも10000機以上が生産されたMiG-21は、近代化改修などを施されながらまだ多くの国で現役である。