時期的な事情で多用途に用いられた凡作機【マクドネルF-101ヴードゥー】
超音速時代の到来~第2世代ジェット戦闘機の登場と発展~【第6回】
第2次世界大戦末期から実用化が推進された第1世代ジェット戦闘機は、朝鮮戦争という実戦を経験して完成の域に達した。そして研究はさらに進められ、亜音速で飛行する第1世代ジェット戦闘機を凌駕する超音速飛行が可能な機体が1950年代末に登場。第2世代ジェット戦闘機と称されて、超音速時代の幕が切って落とされた。前シリーズに続いて本シリーズでは、初期の超音速ジェット戦闘機(第2世代ジェット戦闘機)について俯瞰してゆく。

ベトナム戦争中、同国のジャングル上空を飛行するマクドネルRF-101ヴードゥー偵察機。本来の戦闘機を示す「F」の前に追加されている「R」のアルファベット記号は、偵察機へと改造されていることを示す。機体には同戦争で用いられた「東南アジア迷彩」が施されている。1967年5月の撮影。
アメリカ空軍における「F(戦闘機)」記号を備える実用機は、ノースアメリカンF-100スーパーセイバーで100番台に突入したため、同機とそれ以降の100番台の戦闘機は「センチュリー・シリーズ」と称された。
東西冷戦が激化していた当時、アメリカ戦略航空軍(SAC)は、敵国の深奥へと侵入して核爆弾を投下する戦略爆撃機の護衛や、戦略爆撃機に先行して進路の安全を確保する「露払い」として運用できる長距離侵攻全天候戦闘機を求めた。
これを受けたマクドネル社は、試作で終ったXF-88ヴードゥーをベースとした発展型を開発。これがF-101で、XF-88からヴードゥーの愛称を受け継いだ。初飛行は1954年9月29日。
マクドネル社は、自社の戦闘機に化物や妖怪の名称を付けており、本機にはゾンビ伝説とかかわりのあるヴードゥー教の名を付けているが、他にもデーモン、バンシー、ゴブリン、そして有名なファントムと、第二次大戦後の一時期の同社の戦闘機名は、さながら「妖怪大行進」の感がある。
F-101は、翼面荷重が高い小さめの後退翼とT字型尾翼を組み合わせた双発の機体だったが、このような翼配置の機体はディープストールを起こしやすく、案の定、本機もこれを起こすため、飛行制限がかけられた。
当初の計画のように、F-101は戦略航空軍の長距離侵攻全天候戦闘機としては採用されなかった。だが戦術航空軍(TAC)に敵地侵攻戦術核爆撃戦闘機として採用され、防空航空軍(ADC)は長距離迎撃戦闘機として採用した。
しかし、すぐに当初から敵地侵攻戦術核爆撃戦闘機の要素を盛り込んで開発されたリパブリックF-105サンダーチーフが配備されたため、F-101の同任務対応は短期間で終わった。一方で、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)による連携もあってカナダ空軍も本機を迎撃戦闘機として採用している。
F101がもっとも活躍したのは、高速偵察機としてであった。特にベトナム戦争では大活躍しているが、北ベトナムのガイドライン地対空ミサイルや高射砲による対空砲火の中に飛び込んで行かねばならない強行偵察に従事したため、多数の本機が失われている。